トヨタ自動車が来るコネクテッド時代に向けて動き出した。先ごろ発売した新型クラウン、新型カローラスポーツを皮切りに、車両の制御ネットワークに接続する車載通信機を搭載した自動車の本格展開に着手した。今後投入するモデルには、この通信機を搭載する計画で、年1000万台の販売規模をベースに独自エコシステム構築を目指す。アップルの実現した「ハードとソフト(サービス)の融合によるビジネスモデル」というイノベーションが自動車産業でも期待される。ただ思惑通りいくかどうか。予断を許さない状況にあるのではないか。
 第一に、個人用端末として自動車が非常に中途半端な存在である点。職業ドライバーでもなければ使用している時間が非常に限られるほか、その大きさから使うシチュエーションも限定される。また車両の保有形態に鑑みれば個人との紐づけも相当限定せざるを得ないだろう。その意味で、端末としてはスマートフォンやスマートウオッチより、むしろテレビやパソコンに近い存在と言える。
 また「自動車ならではの新たなサービス」といっても、車両の保守管理や保険関係などにとどまるのではないか。ナビゲーションや音楽・映像配信といった需要もあろうが、これらのサービスは商業化ずみ。スマホと車載ディスプレイとの連携が実現している今、既存サービスを上回る利便性を提供できるのか。こうした自動車の移動端末としての特性や新たなサービスの可能性を考えると、コネクテッドカーというハードが普及したとしても新たなビジネスモデルを構築するのは容易ではない。
 さらに注意を要するのが、世界的趨勢として個人情報保護が厳しくなっていること。EUのGDP(一般データ保護規則)では、EU域内の個人データを域外に持ち出すことを厳格に制限する。域外から域内のデータに遠隔アクセスして画面表示するといったことも含まれる。先行企業による情報寡占化が市場の競争環境に対する脅威として問題視されるなか今後、こうしたネット環境における個人情報取り扱いの規制が強化されることが予想される。それによって位置情報をはじめとした各種情報データの利用が、どのような影響を受けるか不透明だ。
 とはいえ、常識で想定し得ない革新をもたらすのがイノベーションであるならば、これら懸念が杞憂に終わる可能性は大きい。他社に先駆けて取り組みを開始したトヨタには、ゲームチェンジャーとして「100年に1度」という枕詞に相応しい、想像を超えた新たな価値の創出を期待したい。

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