子供の本離れが叫ばれて久しいが、「朝の読書活動」のお陰で小学生の読書量は増えているらしい。むしろ大学生が学生生活や課外授業、アルバイトなどで忙しく、読書に費やす時間が減少しているという。ただ、スマートフォンを眺める時間を考えれば、文章に触れる時間は格段に増えているに違いない▼旭化成名誉フェローの吉野彰さんがノーベル化学賞受賞会見で紹介した書『ロウソクの科学』が話題だ。小学生の時に先生から薦められ、これが研究者の道に進むきっかけになった。3年前にノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典氏もこれを読んで、科学に関心を持ったというから世間も黙っていない▼同書は英国科学者ファラデーの講演内容をまとめたものであり、たった1本のロウソクからその種類、製法、燃焼、生成物質を語ることで、科学と自然、そして人間との関わりを伝えている。1861年に刊行され、今でも子供たちに感動を与え続けているのだ▼文部科学省は読書活動を「人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」と記した。紙の本でも電子書籍でも同じことがいえるだろう。吉野さんは今回の受賞を「色々な分野で頑張っている若い研究者の励みになってくれると思う」と語った。化学の分野で、ぜひ後に続く人が出てきて欲しい。(19・10・24)

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