30年ほど前に整理部という内勤の編集部門に所属していた。当時は手書きで原稿を作成していた時代。実に個性的な字を書くベテラン記者に読めないところを尋ねたら、「俺の字は目じゃなくて心で読め」と言われたことがある。しばらく原稿用紙と睨めっこしたが、読めないものは、やはり読めない▼仕方なく整理部の先輩に聞いたところ、すぐに教えてくれた。おかしなもので、その仕事をしばらく経験すると自然と読めてくる。ほかにも個性的な字をリズミカルに原稿用紙に記す何人かの難敵ベテラン記者の暗号のような文章も、何の苦労もなく解読できた。実に慣れとは恐ろしいものである▼インターネット社会の現代では、パソコンのキーボードを叩いて原稿を作成する。そのため誰が書いても同じ書体。記者が締め切り時間に間に合わせようと必死に努力している状況など、文字からは読み取れなくなった。できあがった活字のため、ついつい読み流してしまうこともある。これは一つの慣れの怖さだ▼平成と同じように「令和」にも時間とともに慣れて、愛着が湧いてくるのだろう。この令和の時代は早速忙しい。G20、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックと、日本を舞台に世界が注目する催しが続く。これらは新鮮な気持ちで待ち続けたい。(19・4・4)

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