働き方改革関連法が先月29日に成立した。これを受けて経団連の中西宏明会長は「創造性を発揮できる環境の整備、長時間労働の是正は喫緊の課題。安倍総理のリーダーシップの下、成立にいたったことを評価する」とのコメントを発表。経済同友会の小林喜光代表幹事も「第4次産業革命が進展するなか、世界で勝ち抜くための競争力強化には、創造性を高める新しい働き方が不可欠」として「時間や空間に縛られない、より多様で柔軟な働き方の実現に向け、政府には労働法制の抜本的見直しなど、より一層の改革推進を求めたい」と歓迎している。
 市場環境の急激な変化によって近年、イノベーション創出の重要性が高まっている。しかし日本企業がイノベーションで世界に後れを取っていることが多方面から指摘されている。そのなかで両氏とも、今回の法改正を創造性の向上につながるものと位置付けた点は興味深い。
 経済同友会は「『いて欲しい国、いなくては困る国、日本』を実現する人材戦略」と題する提言を先月公表した。そこでは日本型雇用慣行を「鎖国」になぞらえ、待望される真のエリートの姿を利他の精神から明治維新を成し遂げた「幕末の志士」に重ねている。
 また世界のエコシステムでは「ミッションベースで多様な知恵とスキルを持った人材が結集し、プロジェクトベースで物事が動き、明確なジョブに基づいてスピード感あふれるアウトプットが行われている」という。これに対して日本は「新卒一括採用、終身型雇用システムが強固で、大卒・日本人・男性中心のモノトーン社会を形成し、組織ベースで物事が動いている」と指摘した。ジョブはあいまいで、合議を重視するので何をするにも時間がかかる。そして長時間働くことが、いまだ潜在的に評価されている。現在の経営者や管理職が、既得権益ともいえる日本型雇用慣行にしがみついていると「日本は世界から取り残され、ともすれば存在感を失い世界のトップランナーであったことさえも忘れ去られてしまう」と警鐘を鳴らした。
 働き方改革関連法の成立によって残業時間の上限規制と同一労働同一賃金、脱時間給制度が導入される。政府は、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境の整備に資するもの-と位置付ける。一方では、収入も高いが負担も大きい正社員と、単純労働ばかりで低賃金の非正規雇用労働者に分断されるとの見方もある。今回の改革を通じて日本に真のエリートが登場するのか、そして経済・産業に“維新”をもたらすのか。大いに期待したい。

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