さまざまなショッキング映像をテレビから受け取ってきた。アメリカ同時多発テロで航空機がビルに激突する映像や東日本大震災で津波に町が飲み込まれていく映像などだ。このように動きの激しい映像ではないが、先月放送されたNHKスペシャル『彼女は安楽死を選んだ』から受けた衝撃も大きかった▼安楽死が容認され海外からも希望者を受け入れている団体があるスイスで、50代の日本人女性が安楽死を遂げた。女性は多系統萎縮症という神経難病を患っている。歩行や会話が困難となり、やがて胃ろうと人工呼吸器が必要になると宣告される。自殺未遂を繰り返す女性。一緒に暮らす姉と対話を続けながら、人生の最期は意志を伝えられるうちに自らの意志で決めたいと、安楽死団体に登録する▼最期の瞬間。警察に提出するためのビデオ撮影が行われる。名前や誕生日を聞かれ、英語ではっきり答える。「準備はいい?」と医師に聞かれると、「じゃあ開けます」と笑顔で言い、致死薬の点滴のストッパーを自ら開けた。姉ふたりとすこしの言葉を交わし、最後は「病院にいつも来てくれたから…すごく幸せだった」と一音一音ゆっくり発し、息を引き取った▼終末期医療はどうあるべきか、それまでとは違うレベルで考えさせられた。多くの視聴者もそうだったのではないか。(19・7・10)

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