リチウムイオン2次電池(LiB)の発明で有名な旭化成フェローの吉野彰氏。このほど全米技術アカデミーから工学分野のノーベル賞と呼ばれる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」を受賞した。昨年6月のロシア「グローバル・エネルギー賞」など、これまで数々の栄誉を獲得。ノーベル賞有力候補の常連でもある。
 過去のチャールズ・スターク・ドレイパー賞受賞者には、集積回路を発明したジャック・キルビー氏などが名を連ねる。日本人研究者としては、昨年の奥村善久氏(携帯電話のネットワーク、システムおよび標準規格に対する先駆的貢献)に続き2人目。今回、世界に先駆けLiBを商品化したソニーで中心的な役割を担った西美緒氏らとともに受賞した。
 導電性高分子のポリアセチレンの研究に限界を感じたことがLiB開発のきっかけになったことは有名な話だ。負極を新しいカーボン材料に切り換え、正極にコバルト酸リチウムを使用することでLiBの原型となる2次電池を考案。さらに技術開発を進めLiBを実用化した。約30年前に「何となく2次電池を小型・軽量化しなくてはと思った」が、これほど進歩するとは予想もしなかった。
 「携帯電話、タブレット端末など順調に用途展開が進んだ。2015年ぐらいに普及期を迎えると想定していた車載用も、少し遅れてはいるが着実に進展している」。ロンドンタクシーのように電気自動車が義務化されれば量的拡大が一挙に進むと期待する。
 社内の吉野研究室ではLiBの未来予想や新しい材料解析などがテーマ。「車載用でいえば、大型電池の実力が小型電池で発揮できるようにしなくてはいけない。従来の考え方ではない電解液など材料開発は永遠に続く」。さらに正極材、負極材、電解液、セパレーターを含めた組み合わせの重要性を強調する。
 大学時代は石油化学専攻。入社して研究部門に配属され、LiBの前に3つほどの研究に携わった。研究者として難しいのは「剛直性と柔軟性のバランスを保つこと」。また、「能天気でないとだめ」ともいい、自分はそれを備えていると分析する。
 「日本が主導してきたLiBが国際競争力を付けるための原点は材料。ここで強くなり輸出を増やす。もう一つは、電池メーカーと協力し自分達の電池をつくること」と強調。そのうえで、電池メーカーは「自前の技術を持つことが重要だ」と言い切る。
 学生時代は水泳部に所属。また、2年ほど考古学のサークルにも籍を置き、「すべては物的証拠、データが揃っていないといけない」と研究との共通点を感じている。
 週末は30年ほど続けているテニスで汗を流す。2月18日にワシントンで開かれる授賞式には家族で赴くが、「昨年のロシアは家内のほか娘2人を連れて行ったので、今回は息子だけにしようかと思っている」。(児玉和弘)

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