人口や面積、域内総生産額が全国の1割程度に相当するところから、日本の「1割経済」ともいわれる九州。自動車や半導体産業が集積するなど、日本の製造業における要衝であり、関東、近畿、中部に次ぐ経済圏を形成する。また日本列島の南西部に位置し、中国や東南アジア地域に近いことから、アジアをはじめとした世界と日本を結ぶゲートウェイ(玄関)としての役割を果たす。近年は外国人旅行客数も多く、海外との結びつきがますます深まっており、わが国の成長を支える重要な経済圏となっている。
 しかし昨今の米中貿易摩擦の激化が九州経済にも影響を及ぼしているほか、日韓の対立が深刻化するなかで観光客減少の長期化が懸念される。加えて大きな問題とされるのが九州域内における経済格差だ。サービス業をはじめ、より働き口が多い福岡市への人口流入により一極集中が加速している。市の中心部である天神地区では再開発の動きが具体化しており、今後ますます地域格差が進むと予想される。労働人口減少にともなう人手不足解消のみならず、格差解消が九州経済全体の活性化に向けた大きな課題といえる。
 こうした状況に対応するため官民共同で医療・ヘルスケア・化粧品、環境、農林水産業・食品、観光分野などを対象に関連産業の振興を目指している。またIoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能(AI)などの普及によって従来の産業・社会構造が大きく変化するなか、九州経済産業局ではIoT利活用の促進による生産性向上や新商品・サービスの創出を図るべく「九州IoTコミュニティ」を設立した。現在、九州IoTコミュニティや地方版IoT推進ラボなどが連携し、IoT活用に向けた取り組みの推進や地域課題解決に向けた新サービス・事業の創出といった、IoT導入事例の拡大を図り、経営者に対する第4次産業革命の理解促進に努めている。
 IoTや第4次産業革命によるビジネスモデルの変化にともない、大学やベンチャー企業などの新しいアイデア・技術を取り込むことが新産業創出のカギを握るようになってきた。全国各地の自治体では、ベンチャー企業やスタートアップ企業を支援する活動が盛んに行われている。九州では、九州経済連合会と九州大学などが現地の大学発ベンチャーを支援する「九州・大学発ベンチャー振興会議」を創設。地域連合型でベンチャーを生み育てようと、事業化案件の拡大に取り組んでいる。九州ならではの強みや特性を生かしながら「オール九州」による新産業を創出してほしい。

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