世界で最も売れている医薬品のトップテンをみると、半分以上を抗体医薬などのバイオ医薬品が占めている。多くは海外のアカデミアやベンチャー、製薬企業が実用化し、大型製品に育てた。小野薬品工業と米ブリストルマイヤーズスクイブが共同開発したがん免疫薬「オプジーボ」がトップテンに迫っているが、日本由来はその程度。
 抗体医薬も特許切れが出始めており、医療費を抑えたい各国政府はバイオシミラーに衣替えして使用促進に力を入れる。バイオシミラーで先行するのが韓国だ。国策としてバイオ医薬品の製造受託を振興しており、サムスンバイオロジクスは欧米のバイオ大手に並ぶ生産体制を整えた。日本企業も国産シミラーを複数開発しているが、とくに市場規模の大きい抗体医薬では出遅れた。
 10年前、日本の医薬品の輸入超過額は約1兆円だったが、2017年に2兆円を突破した。現在、がんや自己免疫疾患、希少疾患・難病に対する新薬のほとんどが抗体医薬などのバイオ医薬品。国産バイオ新薬およびシミラーで遅れた日本は、輸入に頼る構図が長年続き、その依存度は高まるばかりだ。
 「バイオ医薬品後進国」と揶揄されざるを得ない背景の一つに、日本の製薬会社が低分子化合物に固執しすぎたことが挙げられる。日本の製薬は低分子創薬を駆使して生活習慣病や抗生物質などの分野で大型薬を相次ぎ生みだし、グローバル事業の基盤確立につなげた。ただ低分子創薬を手がけやすい疾患は少なくなり、アンメット・メディカル・ニーズの高いがんや希少疾患は抗体創薬が勝った。
 欧米を本拠とする多国籍製薬企業も日本企業と彼我の差はなかったが、とくに米国などで異なるのは創薬エコシステムが形成されている点だ。製薬大手は抗体医薬の有望なベンチャーを丸ごと買収。経験豊富な臨床開発ノウハウを駆使して承認を取得し、世界に売り込んだ。日本企業も慌てて米国などの海外ベンチャー買収に動いたが、有望案件は先を越された。
 一矢報いることができそうなのは第一三共だ。がん細胞表面に発現しているたんぱく質に結合する抗体と、がんを攻撃する低分子化合物を組み合わせた次世代抗体医薬である抗体薬物複合体(ADC)で先頭を行く。がんに強い英アストラゼネカとの巨額契約にも成功した。19年度前半に米国で申請予定で、承認を得られれば技術にお墨付きがつく。時限のある知的財産の価値最大化には、一刻も早い実用化と、得た利益を次世代研究に振り向けるサイクルをライバルよりも速く回すことだ。

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