食肉を巡って革新的な取り組みが進んでいる。米国では植物素材ベースの「代替肉」がスーパーで販売され、注目を集めている。ベジタリアンや欧米で増加する動物系食品を一切摂らないビーガンに加え、美容や健康に対して非常に意識の高い消費者、通常食の維持者まで、多様な食生活に対応する新たな食材ジャンルとして成長することが予想される。新興国で食肉需要が拡大するなか、輸入依存度の高い日本には世界的にハイレベルな食品加工技術がある。代替肉のほか「培養肉」などの新しい国産商材創出のため、オールジャパンの取り組みにドライブのかかるよう望みたい。
 米国では、三井物産が出資するビヨンド・ミートはじめインポッシブル・フーズが代替肉を製造する代表的企業。今月、ハンバーガーチェーンのバーガーキングが代替肉を使用したハンバーガーの販売を開始し、最大手マクドナルドもネスレの代替肉をドイツで採用している。一方、日本でも、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が宇宙や地球上の食料生産・供給に関する「Space Food X」プログラムを今春にスタートさせ、開発テーマの一つに人工培養肉の開発を入れている。これに参画する中核的存在が細胞培養技術による食肉生産を進めているベンチャー企業のインテグリカルチャー。同社は、このプログラムと別に今夏、日本ハムと動物細胞の大量培養による食品生産に向けた基盤技術開発を始めることを公表している。
 また日清食品ホールディングスも東京大学の生産技術研究所と共同で、牛肉由来の筋細胞を用いてサイコロステーキ状のウシ筋組織の作製に成功した。植物ベースの代替肉ではグリーンカルチャーが先行している。
 日本で食肉生産に必要な飼料の量を、農林水産省がトウモロコシ換算で試算している。それによると牛肉1キログラムに必要な穀物は11キログラム、豚肉では7キログラム。8月に同省が公表した2018年度の肉類自給率は数量ベースで牛肉36%、豚肉48%と半数に達していない。飼料の自給率は25%に止まる。畜肉が大量に輸入されていることを考えれば、日本で代替肉の開発を積極的に進めれば、ダイズなどの増産につながり、食料自給率が高まって食料安全保障に寄与する。また培養肉が仮に登場しても、ブランド力のある和牛や豚は一定の市場を保持できるだろう。新技術を用いた肉の開発は、日本のバイオ産業、食品産業、化学産業が協力して推進する価値がある。欧米が先行しているが、技術力を結集すれば、すぐに追いつき、追い越せる。事例が増えることを期待したい。

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