あと9日経てば平成が終わり「令和」の時代に突入する。平成の30年間で日本経済は大きな構造改革に迫られ、化学産業も収益構造の改善に取り組んだ。ポートフォリオの大幅な組み替えを断行し、コモディティとスペシャリティの構成比率の逆転などで事業基盤を強固にした企業も多い。これと同じように働く人の意識も変化しており、それを企業がどう受け止めていくか試行錯誤が続いている。
 ひと言で30年間といっても消費税導入やバブル崩壊、さらにリーマンショックも経験したほか、阪神・淡路大震災や東日本大震災など自然災害も後を絶たなかった。近年は「アベノミクス」の名の下で景気浮揚策が進められ、化学企業も収益体質を強化してきた。ただ保護貿易主義や新興国経済の減速懸念で企業は難しい局面を迎えている。いかなる状況にあっても、日本の化学産業は環境変化に対応した改革を進め、苦難を乗り越えてきた。
 ワークライフバランスが叫ばれるなかで、働く人の意識が変わってくるのも当然だ。日本能率協会が2019年度の新入社員を対象に行った意識調査によると、「仕事優先」から「生活優先」に移行していることが明らかになった。
 平成が始まった1989年は仕事優先派と生活優先派が拮抗し、99年には仕事優先派が生活優先派を大きく上回ったが、09年にはその差が縮まり、19年には生活優先派が仕事優先派を大きく上回った。東日本大震災など未曾有の災害を経験したことや、過労死の問題、働き方改革などを背景に、仕事の軸が会社から個人へシフトしたことが読み取れるとしている。
 また働く目的では「社会の役に立つこと」が昨年より10ポイントほど上昇して3位になったほか、働いている会社が社会の役に立っていることを9割超が「重要だと思う」と回答。ESG(環境・社会・企業統治)に対する時代の要請が強まり、社会的課題の解決を企業経営が重要視するようになった昨今、新入社員にも、その概念が浸透してきていることがうかがえる。
 日本の産業界は今後、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を採り入れた生産革新・業務効率化などが当たり前の時代になってこよう。そのなか企業においても、少子高齢化や労働人口の不足といった日本に顕在している課題への対応が重要テーマになる。一方、プライベート重視の傾向が強まり、ワークライフバランス・働き方改革に対して従来以上の配慮が要求される。「令和」は、人と社会に、より優しい時代であることが求められる。

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