いわゆる「就職氷河期世代」には、非正規雇用など不安定な雇用状況に置かれている人が少なくない。年金制度や健康保険制度などの社会保障制度を維持していくうえで、これらの世代が将来、社会的負担となる可能性も指摘されている。政府は就職氷河期世代支援プログラムを立ち上げ、就業支援や正規雇用化を図っていくことを決めており、受け入れ企業に対し助成金などインセンティブを強化するとしている。こうしたなかで物流・プラントメンテナンス大手の山九は、就職氷河期世代を対象とする中途採用活動を9月1日から実施すると発表した。同様の動きは今後広がると予想されるが、先駆けて取り組む同社の英断に拍手を送りたい。
 バブル崩壊後の景気低迷時に就職期を迎えた就職氷河期世代は現在、30代半ばから40代半ばに達する。新卒が優遇され中途採用に厳しい慣行が続いたことなどで現在も不安定な雇用や、就職していない人が他の世代に比べ多いとされる。
 政府の支援プログラムは、正規雇用を希望していながら非正規雇用で働く者(少なくとも50万人以上)、就業を希望していながら求職活動もしていない長期無業者など、計100万人程度を対象にしており、正規雇用者については30万人に増やすことを目標にしている。
 山九の取り組みは政府のプログラムに賛同して、就職氷河期世代に就職の機会を提供するとともに、要員体制の充実を図るもの。2022年までの3年間で毎年100人を正社員として採用する。採用のミスマッチを未然に防止するために、必要に応じて2、3日間の社会人インターンシップを実施するとしている。同社の業務は物流、プラントの設計・建設、プラントメンテナンスなど広く、総合職、スタッフ部門への採用も想定。研修制度も用意する。
 同社が中途採用を拡大するのは、必要な人員の確保が困難になっていることも背景にある。大量の定年退職者を補うために毎年500~600人規模で採用しているが、計画採用数に届かない年もあるという。
 東京五輪による景気で建設業界は人手不足が続いていたが、今後も労働人口は減少し、人員の採用環境が好転するとはみられていない。同社が主力事業としてメンテナンスサービスを提供している国内鉄鋼、石油化学プラントは老朽施設が多く、また設備更新もあるため同社に対するニーズは堅調だ。加えて同社は海外でのメンテナンス事業も拡大させている。就職氷河期世代に人材の鉱脈を発見したと評価されるよう、同社の取り組みが成功することを望む。

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