今年4月、トヨタ自動車は上海モーターショーにおいて、新型電気自動車(EV)「CHR-EV」と「IZOA EV」(イゾアEV)を世界初公開した。各国の自動車マーケットに先駆け、中国でお披露目を行ったものだ。その宣伝・広報姿勢には、メンツを極めて重んじる中国の国情や文化、国民性を十分に考えた戦略がうかがえる。公開の際には「(やり方は)分かっているが、やはり中国重視と感じられて非常にうれしい」(在上海日系化学企業の中国人社員)などと、現地で大きな反響を巻き起こした。
 トヨタは、11月21日から同じ中国の広東省広州で開かれる広州モーターショーにおいて「レクサス」の市販モデルEV第1弾を、こちらも世界で初めて公開する。当初、10月の東京モーターショーで発表されるという情報が流れたが、実際にはモビリティ社会に向けた同社の取り組みや次世代の電動化ビジョン「Lexus Electrified」を発表し、レクサスのEVコンセプトカー「LF-30 Electrified」を公表するにとどまった。
 日本でもレクサスは比較的多く見かけるが、中国のレクサス人気は、その比でない。北京、上海、広州など主要大都市圏の車を保有する富裕層では、従来の欧米高級車からレクサスへ買い替えたり、新規に購入することが社会現象となっている。中国の高級車市場で、レクサスは「大躍進」しているのだ。
 先ごろ発表された2019年4~9月期決算で、トヨタは売上高で3年連続の過去最高を達成、最終利益も4年ぶりに過去最高を更新した。その会見でコストダウンや為替変動など、さまざまな要因が語られた。ただ「自動車企業は自動車を売ることで事業を伸ばす」のが基本姿勢。中国でもレクサスを主にトヨタはシェアが伸びており、同国では「今は事実上、トヨタの独り勝ち」(愛知県の化学品商社社長)という。10月までは愛知県下でも、好調な同社の動きに連動して部材や材料企業も繁忙感が続いた。
 ここに来て中国の景気減速のほか、インド、インドネシアなどアジアでの自動車販売の不振が伝えられている。ただトヨタでは「中国の多様なニーズに対応する」(吉田守孝副社長)と力強く語っている。レクサス市販モデルEVを中国で世界初公開することで、同国でレクサスブランドの勢いが、さらに高まるに違いない。「世界初公開」を掲げた広州モーターショーでのプレス公開イベントは、大々的なものになるだろう。トヨタの中国戦略は、したたかさを増してきた。

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