ベンチャー企業への投資規模が高水準に推移している。自らの研究成果を実用化しようと大学や公的研究機関の起業機運が高まっているほか、ベンチャーを後押しするかたちで大手企業が投資を活発に行う。アカデミアなどの研究が大企業との連携を通じて事業化に進み、得た収益でさらに新たな研究の種を作る「エコシステム」をうまく回すことで日本の企業成長力を底上げしたい。
 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの集計によると、2018年度のベンチャー投資額は2527億円(17年度は1883億円)と大きく伸びた。投資先も1530件と前年度に比べて100件近く増加。投資規模は国内、海外とも過去5年間で最高となり、それぞれ1461億円(同1266億円)、1066億円(同617億円)と拡大した。
 19年1~3月の国内投資先の比率をみると、IT関連が56・5%と最も多く、さまざまな産業分野に応用可能なAI(人工知能)への投資も目立つ。さらにバイオ・製薬が12・3%、化学・素材を含めた工業・エネルギーも6・1%と関心が高い。海外投資先をみてもバイオや素材、エネルギーは高い比率で推移する。
 12年時点では化学・素材大手でコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設置している企業は2社しかなかったが、18年までには運営していない企業が見当たらないほどCVCは当たり前になった。最先端動向をつかむために米国のシリコンバレーやボストンに出先機関を置く企業も増え、ベンチャーキャピタルなど外部経由はもちろんのこと、社内外さまざまな角度からベンチャーを目利きし、投資機会を増やしている。
 ただし、それでもまだ海外に比べ投資規模は小さい。例えばベンチャー1社当たりの平均投資額(16年)は日本が1・1億円なのに対して米国は9・2億円と大きな差がある。平均のファンド規模は日本が46億円、米国が179億円と、こちらも開きがある。こうした状況は15年前と比べて大きく変化していない。日本企業は新興分野の投資に前向きだが、ダイナミズムに欠けている。
 日本の化学・素材メーカーは海外同業に比べて収益性や時価総額の低さが指摘されてきた。その一因が、相当の費用を投じている割に事業につながらないという自前の研究開発効率の悪さだった。自前の研究開発に代わる手段として台頭するベンチャー投資、さらにはM&A(企業の合併・買収)をいかに駆使するか。探索や小規模投資に終始する慎重姿勢だけでは成長はつかめない。

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