「このブームは本物だ」-。ある繊維メーカーの素材展示会でアパレル関係者が、こう口にした。「エコ素材は、もう無視することはできない」。
 再生ポリエステルなどのエコ素材は何も目新しくはない。例えば帝人は、ペットボトルリサイクルによるポリエステル繊維「エコペット」の販売を1995年に開始。その歴史はほぼ四半世紀にも及んでいる。
 ただエコ素材の供給は限定的で、環境意識の高い欧米のアウトドアブランドや一部のハイファッション、ユニフォーム向けなどにとどまっていた。その理由はコスト高と風合い。日本のアパレル企業は、世界的にみても素材の風合いに最もこだわるといわれる。その厳しい目には、品質にばらつきがあり、しかも割高なエコ素材は受け入れ難い代物だった。
 それが今年に入って急激に注目されるようになった。一つの要因はSDGs(持続可能な開発目標)の広がり。また、エモーショナルに報道された海洋プラスチック問題が世界中で耳目を集めた効果も絶大だった。さらに環境意識が高く、情報発信能力に優れた「ジェネレーションZ」(Z世代、9~23歳)が消費の中心に台頭したことも大きな理由に挙げられる。ある合繊メーカーの衣料品担当者は「当初は団塊ジュニア世代が消費を引っ張ると思っていた」が、今では「エコに関心の強いZ世代に働きかけなければ成長はありえない」と強調する。
 実際にエコ素材の引き合いは非常に多いという。例えば東レの場合、展示会場でスマートフォンを活用した素材のピックアップシステムを導入している。来場者が購入候補に選んだ素材をリアルタイムに知ることができるものだが、ある展示会ではエコ素材が上位を独占する結果となった。また、環境配慮型の製造を徹底する三菱ケミカルや、エコ素材でありながらバージン原料と同等の風合いを実現したユニチカトレーディングなどの展示会でも、エコ素材に高い関心が集まっていた。
 ファッションは、実は環境負荷の高い業界として知られている。産業水の使用ランキングは世界第2位で、CO2排出量の8%を占める。また、全世界で1500億着もの衣服が年間に生産され、その約30%が売られることなく破棄されるという。
 エコ素材をブームで片付けるわけにはいかない。あくまでファッションのベースであり“普通の素材”だ。エコ素材に注目を集める今だからこそ、業界全体で環境意識を共有化する必要があるだろう。Z世代が思わず「いいね!」と発信するようなモノづくりを期待したい。

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