厚生労働省が作成する統計調査が不適切に行われていたことで波紋が広がっている。指摘されているのは毎月勤労統計調査と賃金構造基本統計。毎月勤労統計調査はGDPの算出にも影響し、現政権への忖度と勘ぐられるのも致し方ない。長年にわたっているとされ、組織的隠蔽との疑いも掛けられている。
 民間企業で昨今、金属や電子材料の品質虚偽表示、免震部品の性能データ虚偽表示、自動車会社の不正検査やリコール隠しが相次いで明らかになった。最近もカルロス・ゴーン氏の報酬をめぐる有価証券報告書の虚偽記載や、賃貸アパート大手で建築基準法違反の疑いがある施工不良が問題視されている。
 これらは一見、個別の不祥事に思えるが、根底に共通の要因が潜んでいるかもしれない。
 評論家の山本七平氏は、著書『「空気」の研究』のなかで、日本人を支配しているのは「空気」だと指摘する。それは気体のことではなく「彼は空気が読めない」などと表現される「空気」の方だ。山本氏は「非常に強固でほぼ絶対的な支配力を持つ『判断の基準』であり、それに抵抗する者を異端として『抗空気罪』で社会的に葬るほどの力を持つ」としている。
 集団が空気に支配されることで都合の悪い現実を隠蔽し、それが不祥事や大失敗につながることは多々ある。
 しばしば日本人と欧米人の民族的な違いが指摘される。日本人は稲作を中心とした農耕民族で、ムラを中心とした家族・地縁でつながっており「言わなくても分かるだろう」といったやや性善説的な面がある。一方、欧米は狩猟民族であり、特定目的のために機能するような集団を形成する。権限・義務の範囲は明確だ。さらに多くは多民族国家であり「言わなくても分かるだろう」は通用しない。
 会社組織も欧米型では取締役は株主から選ばれ、取締役会で代表執行役ら執行役員を選任・解任し、監督するが、日本の場合は取締役と執行役が同じ場合が多い。厚労省の不祥事も民間の隠蔽もそうだが「人は間違いを犯すことがある」といったやや性悪説の立場を取り、第三者委員会など設置して常に外部から監督すべきではなかろうか。併せて内部告発者を裏切り者扱いしない仕組みも必要だ。
 海外進出にともなって外国人の従業員が増加傾向にある。国内では労働人口減少によって外国人労働者が増えるだろう。グローバル化のなかで日本型経営は今後、より欧米化せざるを得ない。「空気を読む」ばかりではない、欧米と日本の長所を融合させた新たな経営スタイルが求められている。

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