サステナビリティ(持続可能性)を経営の基軸にする企業は少なくない。しかし、その姿勢が、どのように実際の事業活動に反映されているのかを、多くの人に理解してもらうのは難しい。そう考えていたら、分かりやすい事例に出会った。
 DSMが開発したメタンガス削減に貢献する飼料添加物が、2020年末~21年初に欧州で販売される見通しになった。この飼料添加物は、メタンガスの主要発生源の一つである牛のゲップを対象にしている。
 メタンの地球温暖化係数(CO2=1)は25。あまり気付かなかったが、牛のゲップはメタンの主要な発生源の一つだというから、気候変動問題に対応するためにメタンガスの発生を抑制することは重要である。
 DSMの飼料添加物は、牛の体調や飼料の消化・吸収などを阻害することなく、牛のゲップに由来するメタンガスを約30%減らせるという。まずは乳牛向けに欧州で販売が始まる見込みだ。同社では、この飼料添加物を「ゲームチェンジャー」になり得るとしている。イノベーションによって地球環境問題を解決し、収益にも貢献可能なことを示しているように思う。
 6月末まで日本法人の社長を務め、8月からグローバルヘッドとして米国で機能性脂質事業の指揮を執る中原雄司氏は、最近上梓した「『未来市場』のつくり方 サステナビリティで変わる企業の常識」(東洋経済新報社刊)で、この飼料添加物を取り上げている。当初は「こんな技術が本当に売り物になるのか」と訝る声もあったと紹介したうえで、DSMが本拠を置くオランダでは、この研究を政府が積極的に後押ししてくれるようにもなったと記している。
 技術と、その期待される成果が政府をも動かし、ついに市場に出す目前まで漕ぎ着けた。同書には「サステナビリティを強く志向する企業は、売れるほど世界がよくなるビジネスを行っているという認識を持つことが欠かせない」ともある。開発した飼料添加物も、売れるほどメタン削減につながるのだから、そういう認識を裏付けるに値するビジネスと言えるだろう。
 DSMのフェイケ・シーベスマCEO(最高経営責任者)は本紙と会見した際「健康、サステナビリティといったことに貢献できれば、より成長の可能性が高まり、収益も向上する」と語った。今回のメタンガスを抑制する飼料添加物は、サステナビリティへの貢献によって同社の成長を支え、収益を高める製品になる可能性がある。まさにサステナビリティの追求と企業経営の両立であり、そのチャレンジにエールを送りたい。

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