日系化学大手が、スタートアップ企業との協業を加速させている。住友化学はこのほど、米バイオスタートアップ企業のザイマージェンと、生物学的手法を用いて革新的な高機能材料を開発することで提携した。住友化学に限らず、化学大手は従来にない開発やビジネスモデルの手法を自社に取り込もうと必死だ。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の発達によって、既存の事業が突然消失する可能性や、従来の手法では開発が限界に達する可能性などがあるためだ。スタートアップとの協業を通じて不可能を可能にし、世界に新たな潮流を巻き起こしてほしい。
 ザイマージェンは世界的に注目されるバイオスタートアップの一社。工場では、AIを搭載したロボットが絶え間なく遺伝子を組み換えて、多様な微生物を生産している。これら微生物は、ガラスのように透明性が高く、かつ柔軟な新素材や、レーダーで探知できないステルス戦闘機のコーティング材などの製造に応用され、世界大手企業の多くを顧客に持つという。
 住友化学とザイマージェンの両社が開発を予定する高機能材料は、ディスプレー用の光学フィルム、傷に強いハードコート材料、フレキシブル基板向け材料、接着剤などだ。ザイマージェンが得意とする生物学を駆使したポリマーなどの新規材料探索と、住友化学が持つ多様な電子材料の知見や化学技術を組み合わせれば「エレクトロニクス分野において真のイノベーションを引き起こす大きな駆動力になる」(ザイマージェンのリチャード・ピータース製品部門責任者)としている。
 住友化学は、スタートアップやベンチャーとの協業を、さらに加速する方針。全固体電池で海外ベンチャーと共同研究を始めたほか、先ごろヘルスケア分野を主対象とした「コーポレートベンチャリング&イノベーションオフィス(CVI)」を米国ボストンに開設。これまでニューヨークを起点としたスタートアップ企業の探索機能を拡充し、人員も増やしている。
 住友化学以外でも取り組みが急増している。今年に入っても東ソーが抗体医薬品の精製を連続化する装置技術を持つ米センバ・バイオサイエンシズに出資したほか、三洋化成工業やJFEケミカルがオール樹脂化を可能とする新リチウムイオン電池を開発するAPBに出資した。
 AIやIoTに限らず、世界は大変化の時代を迎えている。これまでの常識や商慣習にとらわれない新しい発想が必要になる。スタートアップとの協業を通じ、失敗を恐れず挑戦する人材を増やしていってほしい。

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