トヨタ自動車とスズキの資本提携に関する合意が8月28日に正式発表された。両社は2016年10月から協議を始めていたという。今後、強みとなる技術分野の相互補完や小型車開発、電動化やモビリティ産業、環境対応などでの具体的な協業領域を詰めていくことになろう。
 自動車産業は100年に1度といわれる大変革期に入った。次代に向けたキーワードはCASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)。今回のトヨタとスズキの提携について「電動化や自動運転にかかわる相互の技術を補完する」というメディアの論調が多いのもうなずける。
 現在、通信機器メーカーや、米国グーグル、中国の百度(バイドゥ)に代表される検索エンジン企業、インテルをはじめとした電子部品大手など、いわゆる非自動車の世界著名企業が、なんらかの格好で自動運転や小型電動車両の開発・試験に名乗りを上げている。従来の自動車メーカーからすれば「一夜にして将棋の駒が裏返る」事態も想定される。今後も日本にかかわらず、世界中で自動車メーカーや主要部品企業の提携、合従連衡が進むだろう。
 ところで今回のトヨタとスズキの資本提携は、地理的側面からみると自動車の世界最大市場である中国と、電動化や高級化の流れが急進展中のインドという、世界の2大自動車市場での両社の地域補完戦略という側面もあるのではないか。
 現在のところ、その視点で報道するメディアはあまりない。インドの自動車市場はマルチ・スズキの独壇場。同国でスズキのシェアは約50%。スズキ車で街一色との表現も大げさではない。一方、トヨタは高級車レクサスで攻勢をかけており、同国内に半完成車を組み立てる工場の建設を検討中だ。
 中国市場では昨年9月、スズキが撤退し、合弁企業も解消。半面、トヨタ自動車はピュアEV(電気自動車)の中国市場投入を発表。同国での生産規模を22年ごろに330万台以上と、日本と同等にする投資戦略も示した。
 ただ上海や北京といった大都市は、慢性的な交通渋滞からグリッドロック寸前。打開策として小型車やミニバス、地域カーの普及拡大が政府筋で真剣に検討されている。大型車が現在主流の中国も、都市部限定で小型タイプの電動車や地域カーが再び求められる可能性が極めて高い。今後、トヨタを通じスズキの技術による小型電動車の中国投入や、さらにインドでの市場シェアを高めるべく、小型車と高級車の相互補完といった動きも考えられよう。

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