世界最速で少子高齢化が進む日本。人手不足や設備老朽化などの課題を抱え、公共・産業インフラでは、従来以上に人手をかけずに設備の維持・メンテナンスを行うことが求められる。こうしたなかでリモートモニタリング(遠隔監視)のニーズが高まりつつある。人手による巡回の手間を省くとともに、山間部など人が立ち入りにくい場所や、高温やガスの発生で危険な場所でも安全に監視できる。
 富士経済によると、リモートモニタリングの有償サービスの市場は、ファシリティ分野だけで2018年(見込み)の4907億円から、30年には5729億円と18%以上の成長が予測される。多くは設備メーカーのアフターサービスや保守管理業者のサービスメニューとして提供されているが、設備保全・整備の人手不足が言われるなか、市場拡大が見込まれる。
 ファシリティ分野をみると、エレベーターは、すでに75%以上が遠隔監視を採用している。今後、老朽化設備のリプレースにより90%近くまで上昇する見込み。空調設備は、まだ99%以上がモニタリングされていないが、故障予知や省エネ価値創出によりサービスのビジネス化が進むとみられる。
 生産設備(工作機械)は70%近くが未採用だ。一部の工作機械メーカーがクラウドを活用した遠隔監視を手がけるが、生産管理システムと連携することが多く、情報漏えい防止の観点からもユーザー内で完結した仕組みが中心。無停電電源装置(UPS)も、多くは現場の専門技術者が状態監視を行っており、85%が未採用という。
 今後は保守・メンテの効率化にとどまらず、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用し、より高度な制御を自動で行うことで、大幅な生産性の改善やコスト削減、連携した複数の機器群や工場全体の効率化・安全性向上など、新たな価値の創出が期待される。
 さらに5G(第5世代通信)が普及することで、より高度な予防保全や災害対策につながる。効果はファシリティ分野にとどまらない。まだ市場は小さいが、モビリティは30年に18年比3・6倍、農業・畜産は同16・7倍、エネルギーは同9・1倍、環境インフラは同10・5倍、医療・福祉は同5倍など大幅な成長が予測されている。
 課題先進国であるわが国において、遠隔監視の重要性はさらに増すだろう。ビジネスモデルも、サブスクリプション型やアズ・ア・サービスなどに進化している。新たなビジネスチャンスをつかむことができる業種として、注目を集める可能性も大いにあるのではないか。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る