環境負荷軽減への動きがグローバル規模で本格化するなか、専門商社がバイオマスエネルギー関連ビジネスへの取り組みを本格化している。自社で保有するグローバルネットワークの活用による各国からの優良な原料の調達や発電所建設への関与など、商社ならではの強みを生かした活動が特徴といえる。

 矢野経済研究所が実施した国内のバイオマスエネルギー市場に関する調査では、2021年度の国内バイオマスエネルギー市場規模は前年度比8・3%増の7261億円となる見込み。さらに23年頃から国内でバイオジェット燃料の本格的な採用が始まることもあり、同年度の市場規模は8654億円へ拡大すると予測する。その内訳をみると、バイオマス発電市場ではFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)の見直しで、23年頃を境に大規模な木質バイオマス発電所新設の増加ペースが鈍ると予測する。一方でメタン発酵のように廃棄物の処理、再資源化を目的とする事業は、廃棄物が排出される限り需要はなくならないと判断している。

 バイオマスに取り組む専門商社の動きを見てみる。機械商社の東京産業は、バイオマスとその他の再生エネルギービジネスで、発電所建設請負受注から燃料供給まで一気通貫での提案を進めている。プロスペックAZなど3社の合弁会社である東松山バイオマス発電合同会社が22年3月から埼玉県で稼働を予定するバイオマス発電所は、東京産業が建設工事を受託した。同発電所で燃料として使用される剪定枝は、街路樹から発生する都市廃棄物として処分方法が課題となっているが、バイオマス燃料として使用することで解消できる。国内で調達できるのもメリットだ。

 また西華産業は、バイオマス発電や小型水力発電など再生可能エネルギーへの取り組みを加速しており、バイオマス発電向け燃料など脱炭素型商材の拡充を進めている。さらに水素発電の実現に向けて「水素バリューチェーン協議会」に加盟。脱炭素に貢献する水素発電の課題解決に向け活動している。

 さらに、ある中堅化学品商社は、バイオマス発電所向けPKS(パーム椰子殻)の輸入販売とともに、東南アジアでPKS以外の高付加価値原料を探索している。

 バイオマスエネルギーに関連するビジネスは、カーボンニュートラルが必須となる社会において重要度が増し、今後の拡大が見込まれる。原料調達から発電施設の建設、メンテナンスにいたる各場面でビジネスチャンスが見込まれるため、専門商社の動きも活発化しそうだ。

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