オフィス用品通販大手のアスクルと、アスクルの株式45・1%を持つヤフーの親子対立を契機として、上場子会社(親子上場)のガバナンス問題が改めて浮き彫りになった。アスクルの個人向けネット通販「LOHACO」(ロハコ)事業のヤフーへの譲渡を巡って両社は対立。ヤフーの意向により、アスクルの岩田彰一郎社長(当時)と3名の独立社外取締役の再任が否決された。ただヤフーと第2位株主であるプラスの議決権行使を除いた賛成比率は、4名いずれも過半数を大きく超え、少数株主から圧倒的な支持を得ていたことが後に判明した。
 このように上場子会社はガバナンスが効きにくく、株主間の利害が相反した場合、親会社株主以外の少数株主利益が保護されない状況が生まれやすい。親会社との業務連携や取引行為が親会社株主の利益にはなるが、上場子会社の企業価値向上につながらず、株価が割安に放置されている場合も多い。
 とくに日本は欧米各国に比べて上場子会社の占める割合が高い。全上場企業数に占める上場子会社の割合は米国0・5%、英国0%、フランス2・2%、ドイツ2・1%。これに対し日本は6・1%だ。自動車関連やライフサイエンスなど成長分野への参入・強化を目的に上場ベンチャー企業をM&Aしている化学業界や、従来のトレード型ビジネスから事業投資に舵を切っている総合商社なども多くの上場子会社を抱えている。
 多くの弊害が指摘される上場子会社だが、日本ではグループ経営の一つの手法として定着しており、すぐに子会社の上場を禁止することは影響も大きい。子会社としても、上場企業としてのブランドやストックオプションなどが社員のモチベーションアップにつながっているというメリットもある。
 ただ海外を中心に機関投資家からの上場子会社に対する非常に評価は厳しい。少数株主保護のため、本来であれば上場子会社のガバナンス体制は一般上場企業より充実していなければならないが、実情は真逆になっているからだ。
 経済産業省は6月に「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」を公表。上場子会社における独立社外取締役の役割や独立性に関する考え方、上場子会社経営陣の指名のあり方などのベストプラクティスを示した。今後、日本の株式市場の信頼性をさらに高める観点からも上場子会社については取締役会の半数を独立社外取締役にするなど、厳しいコーポレート・ガバナンス(企業統治)基準を適用することが求められよう。

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