3月21日、中国江蘇省の塩城市で起こった大規模な化学品工場の爆発事故。発生以降、中国の行政当局は、全土の化学品工場で環境や安全生産管理にかかわる厳しい査察・点検を相次いで実施。また現地の行政当局が事故を起こした塩城の化工開発区自体を閉鎖する方針を決めたほか、同区を有する江蘇省は省内で事業活動を行う化学企業を今後、大幅に削減し、化工開発区の数も半分以下に縮小する省政府方針を打ち出した。
 事故による直接的な死亡者と周辺地域の重軽傷者は、合わせて数百人規模とも言われる。当事者が多く亡くなったため、爆発の直接的な原因も正確には解明されていない。化工開発区閉鎖を公表した当局には、周辺住民・国民の感情を踏まえ、早めの幕引きを図ろうとする姿勢も透けて見える。一方で閉鎖の発表以降、ウエブ上あるいはSNSで当局に対する意見や批判の声が上がっている。
 いわく「閉鎖では問題の根元的な解決にならない」「やり方が官僚的すぎる」「化学品生産にかかわる安全専門家の育成が急務」など、当を得たコメントが書き込まれた。また在上海の中国系化学品商社トップは「地方に行けば、くわえ煙草で溶接・塗装をする現場作業者も見受けられる。そうした作業者は農民工の方も多い。事故防止の根本は、化学産業に従事するすべての人々の社会的な常識教育や安全教育を、時間を掛けて行うことではないか」と問いかける。
 もちろん政府による規制強化や、生産活動の安全が確保されていない化学品工場の取り締まり・閉鎖は、当然の措置として理解できる。爆発を起こした塩城の工場は、事故前に当局が安全性に不備があると指摘し、罰金なども課されていたという。そうした措置が事故防止につながらなかったと思うと残念でならない。江蘇省は、山東省や上海周辺と並んで中国における化学品生産規模で毎年、上位ランクに入る化工開発区が立地している。今後、政府当局が進める閉鎖や縮小政策により、わが国の化学業界に少なからず影響が生じてくるだろう。
 ただ産業全体の高度化を目指す中国の政府方針がある故、一律に化学産業を大幅規制しても根本的解決は覚束ない。化学産業は社会の隅々まで素材や材料を提供する基幹産業。中国が育成を目指す半導体産業も膨大な化学品が使われ、化学品なくして半導体、液晶も自動車もリチウムイオン2次電池も生産は不可能。中国が真に取り組むべきは化学産業に従事する人々への安全教育徹底であり、化学専門学校における基礎教育の充実、人材育成ではないかと感じる。

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