製造現場にIIoT(産業向けモノのインターネット)を導入する機運が高まっている。これまでは大企業が先行していたが、ここにきて中小企業も前向きに取り組み始めている。
 製造業の厳しい競争に勝ち残っていくうえで、いかに生産性を高め、競争力を確保していくかが大きなカギを握る。一方、日本は、新規人材の採用が難しくなりつつあり、さらにベテランの退職で技術の継承が困難となっている。設備の老朽化を背景に、機器の故障・停止の頻度も高まる傾向にある。
 中小企業でもIIoTで生産を自動化すれば、人員不足の解消や製品の品質安定化が可能になる。設備や機器の稼働状況を見える化して故障や異常の予兆を検知し、部品交換やメンテナンスを最適化すれば作業負担・コストを低減できる。クラウドに集めた設備データを分析し生産性を高めることも可能だ。
 しかし今まで接続されていなかった設備や機器がネットワークにつながるようになるため、セキュリティ対策が十分でないと、さまざまな被害に遭う恐れがある。設備・機器が急に止められたり、遠隔で操作される可能性があるほか、検査データが改ざんされて知らぬ間に不良品が出荷されてしまう。稼働データの改ざんで機器異常の発見が遅れれば、大規模な故障やトラブルが発生する可能性もある。さらに自社工場の停止の影響が取引先に及べば、さらに大きな被害になり得る。
 こうしたことからコンピューターセキュリティの情報を収集し、インシデント対応支援やコンピューターセキュリティ関連情報を発信する中立組織のJPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC、東京都中央区)は、中小製造業を主対象としたセキュリティ対策ガイドブック「工場における産業用IoT導入のためのセキュリティファーストステップ」を公表している。産業制御システムに不慣れな担当者にも分かりやすく、現場で活用しやすい内容とし20ページにまとめた。
 全体は3部構成。まず最初に経営者に対しセキュリティ対策がIoT投資の一部とし、その重要性を訴え、続いて現場管理者や技術担当者を含め、さまざまな対策を重層的に行う多層防御が効果的なことを紹介。最終項では、エンジニアリング会社やシステムインテグレーターを含む関係者間で実施するセキュリティ対策のマネジメント体制を構築するよう促している。
 同ガイドブックはJPCERT/CCのウェブサイトからダウンロードできる。読めば対策は万全というわけではないが、手始めに活用してみては-。

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