新型コロナウイルスの感染症法上の扱いを巡る議論が高まるなか、分類は変えずに、実質的にデング熱などの「4類」やインフルエンザなどの「5類」相当の対応を可能にする措置が図られた。新型コロナは今年2月に新たな分類として「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられ、保健所が介入することになったが、医療体制ひっ迫のなか、医療機関や保健所・自治体の負担軽減や役割・責任を明確化しつつ、感染力の強いデルタ株にも警戒を弱めない実務的な対応といえそうだ。

 従来の方針からの大きな転換とみられるのは、厚生労働省が自治体などに発出した8月25日付の事務連絡「コロナ中和抗体薬の医療機関への配分」(質疑応答集の修正・追加)でなされた。質疑応答のなかで「医療機関による外来投与」や「宿泊療養施設・入院待機施設での投与」の要件の一つに「保健所の介入によらず当該施設で必要な対応を完結できるよう、事前に役割分担および責任の所在を明確化すること」と明記した。

 感染症法は、病原体の毒性や症状の重症度に応じて感染症を1類から5類に分類し、1類のエボラ出血熱などが最も危険度が高い。新型コロナ対応は既存の1類や2類に相当する。一方でワクチン接種率が着実に高まってきているのを見据え、田村憲久厚生労働大臣は感染症法上の扱いを見直す考えも、にじませ始めている。

 インフルエンザなどと同じ5類相当に格下げするとの見方があるが、いま対応を緩めれば、感染力を示す「再生産数」が従来株に比べ極めて高いデルタ株が一段と広がり、深刻な感染拡大につながりかねない。コロナに関する医療費は現状すべてが公費で賄われるが、3類~5類は医療保険が適用され、患者の負担が少なからず発生する。感染症法上の扱いを変えるには慎重に検討する必要があり、有識者との議論を深めるのには、なお時間を要する。

 そこで現実的で即時的な措置として、事務連絡に「保健所の介入がなくても医療機関が必要な対応を完結できるよう」との文言を付記したとみられる。例えば、コロナの入院措置は自治体・保健所が調整する役割を担う。感染者や重症者が急増し、保健所も医療機関も業務がひっ迫する局面では、状況判断や円滑な情報伝達に労力を費やす。

 深刻な状況をどれだけ改善できるかは今後の動向を見守る必要があるが、医療機関と保健所双方の役割と責任をあらかじめ明確にしておけば、少なからず業務のひっ迫度は緩和されるに違いない。救える命を確実に救うことにもつながるはずだ。

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