日本伸銅協会が報告書「伸銅品技術戦略ロードマップ2019」をまとめた。自動車など需要産業の変革、欧州など先進国の伸銅業界の構造再編、中国伸銅業の規模的拡大を踏まえ「国際素材メジャーへの挑戦」と題し、国際競争に打ち勝つための基本的な方向を示した。事業戦略にどう反映するかは各社の判断だが、産業構造変革の影響および、それに対する危機感は共有すべきである。
 2016年版を改訂した同報告書では、世界的に進む伸銅業界の再編が、収益率の低さに起因すると分析。今後も伸銅品の需要拡大が続くとしつつ、収益率向上のために国境を越えた事業規模の拡大、および競争力強化を可能とする品種別専業化が必要と説く。とくに中国伸銅業が圧倒的な国内市場規模と資金を背景にグローバルに展開しており、品質面でもレベル向上が進んでいると記した。
 またCASEに象徴される自動車産業のパラダイムシフトが次元の異なるイノベーション競争をもたらした。勝者は新たな利益の源泉が確保できる一方、ケタ違いの投資が必要になる。とくに自動車開発においては、ソフトを中心としたシステム開発の重要性が高まり、異産業の参入が活発化。擦り合わせ技術を軸としたティア1~4といった既存の階層構造を破壊するインパクトがあり、これら変化への対応が求められる。
 このような観点から、わが国の伸銅業をみた場合、他産業に比べて利益率が低く、グローバル展開が困難な規模にある。大手でも、大企業の子会社か一事業部門であるケースが多く、スピード感ある事業判断が現状難しいと指摘している。
 国際メジャー挑戦は、市場規模の大きい板条および管関連を念頭に置く。基本的方向として専業性を高めて大型投資が可能な規模を追求するともに、知財の戦略的活用が必要とした。
 規模追求に関しては、個社間のアライアンス深耕と、戦略や技術開発まで遡った協業による大型投資の実現を、また、その発展形として伸銅事業の本体からの切り離しや、ホールディングカンパニー傘下に収める形態を提示。知財活用については、合金開発や表面処理といった世界トップの技術力をグローバルで展開していくべきとした。
 業界団体の報告書としては踏み込んだ内容だが、それだけ伸銅業を取り巻く環境が大きく変化しているということだろう。世界に打って出るには、国内を狙った投資・ビジネスの優先順位を下げることや、マーケティングにおいて「顧客と用途は自らが創造する」というマインドチェンジを訴えている。

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