住友化学が買収戦略を加速させている。医薬品部門では、子会社の大日本住友製薬が約30億ドル(約3200億円)を投じ英製薬ベンチャーに子会社買収を含む戦略的提携で基本合意したほか、健康・農業関連事業部門では、約700億円を投じて豪農薬大手から南米4子会社を買収することで合意した。医薬品部門最大の課題は米国で特許切れとなる主力薬「ラツーダ」の次を担う新製品であり、健康・農業関連事業部門の課題は今期4~6月期に陥った営業赤字から成長軌道への早期回帰だ。目前の課題をM&Aで解消を目指すとともに、とくに英製薬ベンチャーが持つヘルスケアITのノウハウ・人材を獲得できる点は大きい。住友化学全体の課題である次世代事業の早期創出には最先端のデジタル・IT技術の活用が欠かせず、目に見えないシナジーに注目したい。
 抗精神病薬ラツーダは年間約2000億円を売り上げる主力薬。米国が最大市場だが、2023年2月に独占販売期間が終了する予定で、それ以降は売り上げ急減が予想される。大日本住友製薬はポスト・ラツーダの筆頭に新規抗がん剤「ナパブカシン」を据え、22年度に膵がんで500億円、結腸直腸がんで400億円の売り上げを見込んでいた。しかし今年7月、膵がんに対する治験中止を発表。ポスト・ラツーダを早期に見いだす必要に迫られていた。
 本体への出資と子会社買収で合意した英製薬ベンチャーのロイバント・サイエンシズは、研究論文やFDA(米国食品医薬品局)の文書など、さまざまなデータを集め、新薬候補案件をAIで評価するデジタル技術が強み。製薬会社や大学が持つ新薬候補から、短期間に開発できる市場有望性の高い案件を独自に見つけ導入している。14年設立から5年間で、子会社で手がける候補化合物は14領域45品目に達する。複数の品目で売り上げ10億ドル以上が見込まれるなどポスト・ラツーダのポテンシャルを秘める。
 一方、農薬については、世界最大需要国に成長したブラジルを含む南米での布石をかねて検討してきた。このほど豪農薬大手ニューファームから南米4カ国の子会社を買収することで合意した。買収により自社販売網を構築し、製造拠点も手に入れることで、南米での農薬の売上高は約3倍の1000億円規模に引き上げられる。さらに独自開発した大豆用殺菌剤(一般名インピルフルキサム)といった新製品投入などによって2000億円規模を目指す方針だ。
 矢継ぎ早のM&Aで早期に果実を生み出せるどうか。今後の取り組みに注目したい。

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