化学業界に再編の機運が出てきた。2001年に住友化学と三井化学の合併計画が破談して以降、三菱ケミカルホールディングスグループを除き、国内における化学企業同士の合併や提携の動きは停滞していた。しかし世界の政治・経済環境は、時代の変化に直面し産業界の再編機運が高まった1990年代以来となる変革期を迎えている。そうした変革に対応しながら、スピード感をもって世界で生き残る基盤強化を実現するため、企業合併や提携、事業交換といった再編が選択肢の一つとして再び浮上しそうだ。
 平成時代の初期と重なった90年代において、化学業界では再編の嵐が吹き荒れた。国内経済がバブル崩壊と、その後のデフレ不況で疲弊する一方、世界はポスト東西冷戦時代に突入し、その後にIT革命が起こるなど大変革期に突入した。そうしたなか、94年に三菱油化と三菱化成が合併して三菱化学となり、97年には三井東圧化学と三井石油化学が合併して三井化学が誕生した。さらに住友化学と三井化学が合併を計画し、その動きをみて他社も水面下で新たな再編を模索していた。
 00年代から10年代にかけては中国など新興国の成長もあり、08年のリーマン・ショックの時期を除けば世界経済は拡大基調で推移した。この結果、各企業は構造改善を図りながら得意分野に経営資源を集中する戦略を推進。海外進出やM&A(合併・買収)で海外市場も取り込みながらグローバルな成長を果たしてきた。
 平成が終わり令和が始まった現在、世界は再び変革の時期を迎えている。資本主義経済の独り勝ちにより世界が歩調を合わせる時代が過ぎ、再び大国が覇権を争い始めている。世界に影響力を及ぼす大企業の顔ぶれも大きく変わり、製造業が良いものを作ればすむ時代も過ぎようとしている。とくにAI(人工知能)、情報通信技術の急激な進歩は、有用なデータをより多く集めた者が優位に立つなど、素材産業である化学産業のあり方を大きく変えると予想されている。
 破壊的な社会変化も予想されるなかで、企業もまた従来の考え方に捉われない変革を模索している。日本の化学企業があらゆる変化、あらゆる技術進歩に対応しようとすれば単独では経営資源が足りず、スピードも覚束無いからだ。このため単純な企業合併のほか、米ダウ・ケミカルとデュポンが実施したように、事業を持ち寄り、最終的には分野ごとに事業を統合整理する再編もあり得る。その準備段階として、持ち株会社などを活用してグループを形成するといった選択肢も挙げられよう。

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