「公的年金に頼った生活設計では老後に2000万円不足する」-。金融庁審議会の報告書が物議を醸した。年金不信を再燃させ、消費を冷え込ませる一因にもなりかねない。政府には慎重な対応を求めたい。
 年金の課題を解決するためには日本経済の再生や財政の健全化が不可欠となる。先ごろ閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2019」では、少子高齢化の下で、いかに経済を成長させるかといった課題への対策を前面に据えた。2040年代半ばには生産年齢人口が大きく減ると予想されている。経済の活性化や財政健全化、年金・医療・介護といった社会保障制度を維持するためにも、少子化への歯止めとともに生産年齢人口の維持・拡大が不可欠となる。
 労働力確保に向けて高齢者や外国人労働者の活用、氷河期世代対策、少子化対策に取り組む必要がある。高齢者の就業に関し、骨太方針は70歳までの就業機会確保を謳っているが「年金の支給開始年齢の延長が狙い」と、とらえられないよう、ていねいな説明が求められる。特定技能を持つ外国人材の受け入れは、すでに人手不足に悩まされている業界にとって重要な課題だが、日本人と外国人が安心して暮らせる共生社会の実現がカギとなってこよう。就職氷河期の世代では「ニート」と呼ばれる無業者が約40万人いる。働くことを通じて社会参加を促すことも必要だ。
 一方、今回の骨太方針では、出生率を高める対策は、ほとんど見られなかった。フランスでは1970年代に女性の社会進出が増えたのにともない、働きながら子育てしやすい環境を整えたことが出生率の上昇につながっているという。「第2子から支給される児童手当」「低所得の家庭に出る出産特別手当」「3歳になると原則公費負担で保育学校に入れる」など、政府が多様な支援を行っている。社会に共働きが定着しているフランスでは専業主婦が少ない。日本では「少子化対策は票につながらないから政治家の力が入らない」といった指摘もあるが、今からでも出生率向上に取り組むべきだろう。
 骨太方針では、10月に消費税率を10%に引き上げることを明記したが、社会保障や財政健全化は、この引き上げだけでは解決しない。社会保障対策で避けて通れないのが給付と負担の見直しだが今回、この具体策に踏み込まず、次回の骨太方針に先送りした。「参院選を見据えた対応」と言われても仕方なかろう。社会保障の維持に必要な負担増などにも踏み込み、議論を深めねばならない。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る