中央労働災害防止協会(中災防)が主催する「全国産業安全衛生大会」が10月末、京都市で開催された。同大会は企業の経営者や安全衛生担当者、産業保健スタッフ、教育・自治体関係者などが労働災害防止や健康づくり、防災などに関する対策・活動の成果発表や情報発信を通じて相互研鑽し、知見を広げる場として毎年1回開かれるイベント。今年で78回を数える。京都では1938年に前身の「全国産業安全大会」(第7回)を開催。全国産業安全衛生大会となってからは初となった。
 今回は過去最多となる15分科会、約300のプログラムを展開。企業による事例発表に加えファッションデザイナーのコシノジュンコ氏や五輪メダリストの太田雄貴氏ら著名人の講演が行われた。さらに日本有数の大学の街である京都という立地から、京都大学名誉教授、京都工芸繊維大学学長、京都精華大学学長をはじめ、大学関係者の講演がとくに充実したプログラムとなっていた。また初の試みとして大学生、短期大学生、専門学校生を無料で招待。若い世代に学術分野の安全・健康に関する最新の知見を学んでもらうとともに、産業界の労働安全衛生の取り組みの「今と未来」を、直に感じてもらう機会を提供したという。
 中災防は1964年、労働災害防止団体法に基づいて設立された。企業の人材育成、安全衛生の専門技術および最新情報の提供など事業主の自主的な労働災害防止活動を支援している。労働者が安全・健康に働ける環境を作ることは企業にとって不可欠だが、労働環境や就業構造の変化とともに働き方が多様化するなか、それに応じた対策が求められるようになっている。ただ安全衛生に対する重要性や必要性は理解されていても、大企業を除き、実際の作業現場において活動が定着するのはなかなか難しいのが実情だ。また安全対策や機械設備の改善などには少なからずの費用や時間、労力が必要となることから、後回しになることがある。
 しかしながら万が一、事故・災害が起きると大きな損失が発生し、結果的に発生前以上の投資が必要となるケースも少なくない。事故・災害が起こってから改善するのでは遅く、リスクを事前に想定し、予測や予防対策を的確に講じることが、結果的に生産向上および収益の安定確保につながる。近年は製造現場などで発生する労働災害だけでなく、過労死や過労自殺といったメンタルヘルスの問題も大きく、取り組むべきテーマは多い。全国産業安全衛生大会のようなイベントを通じ、日々の活動を考える機会としたい。

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