中国の江蘇省塩城市で3月21日に起きた化学工場の爆発事故を受け、同省は「化学産業の整理・レベルアッププラン」と題して、化学企業や園区を大幅に削減する意見書を策定した。ずさんな管理によって相次ぐ化学工場の事故は看過できない。だが省の削減案は、化学産業の実情や社会生活への影響を無視したもので到底許容し難い。即時撤回すべきだ。
 塩城市響水県の江蘇天嘉宜化工有限公司が起こした爆発事故は、78人の死者を出した。被害は近隣の工場や住居、学校にも及んで、周辺の化学園区・企業の一部は生産停止を強いられている。同省では、その後も昆山市や泰興市で事故が続き、状況を重くみた省政府は対策案として意見書を策定。骨子は「2022年までに省内の化学企業数を4分の1の1000社以下に減らし、53ある園区の認定も20カ所まで削減する」もの。新規の化学プロジェクトの投資額は10億元(約170億円)以上とするなど、参入条件も引き上げた。
 計画は素案段階だが現地メディアほか、ネットでも話題となった。「現実を無視した暴挙」として批判を浴びるのは当然だろう。「数字ありき」とも言えるこの案は、サプライチェーンが寸断されることを想定しておらず、自動車や電気、医療など川下産業への影響を無視している。また投資額制限は、中央政府が推奨する付加価値の高いファインケミカルの発展を阻害するものだ。
 悪質な企業が存在する場合に地域一帯を一律生産停止させる「一刀切」は、3月の全国人民代表大会でも中央政府が厳しく取り締まる姿勢を示した。江蘇省の案は「臭い物に蓋をする」発想で一刀切の最たるものだ。
 批判を受け、江蘇省は削減の期限・規模を緩める検討を開始したとされる。設備安全でリスクを抱える企業の生産停止や制限措置は理解できる。しかし、ここは批判を真摯に受け止めて計画をいったん撤回し、個々の地域や製品の実情に即した対策を示すべきだ。
 同省に拠点や顧客、原料供給元を抱える日系企業にも不安が広がっている。まずは自社の法令順守やサプライヤーの経営・操業管理の確認を徹底して欲しい。商工クラブや欧米企業など地域で連携し、自社を含むサプライチェーンの重要性を、政府に今一度強く訴えることも有益だろう。
 事故によって「化学は危険」とのイメージが地域に広がりつつある。化学製品が実社会に不可欠で、暮らしをいかに豊かにしているか。住民との対話を通じた啓蒙活動も必要だ。

新聞購読のご案内

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る