化学各社が10年後、30年後といった将来を想定したうえで、従来の延長線上にはない新たな道を進もうとしている。情報通信革命、循環型社会への移行、国内での労働力不足といった足元の潮流は今後、社会および産業に大きな変化をもたらすと予想されている。数十兆円の売上高を持つ自動車メーカーでさえ危機感を強める変化の時代に、化学企業が切り拓く未来の姿とはどのようなものか。新境地の探求が続きそうだ。
 国内化学最大手の三菱ケミカルホールディングス。2025年度を最終年とする新たな中期経営計画について越智仁社長は「30年におけるターゲットと50年におけるゴールをそれぞれ設定し、そこからバックキャストした計画になる」と語る。住友化学も岩田圭一社長の下で今年度からスタートさせた新中期計画の重点戦略は「次世代事業の創出加速」「デジタル革新による生産性の向上」であり、変革への意志が表れている。
 21世紀も20年が過ぎた現在、人類は変化の時代にある。世界の政治・経済は目まぐるしく変動し「人口動態以外は半年後でさえ予測が困難」とされる。一方で、過去と非連続な変化の渦中にあるがゆえに「変化の本質を見誤り、機敏に対応できなければ存続が危ぶまれる時代」でもある。そうした波は、すでに20世紀の終盤から起こってはいたが、いよいよ巨大な高波の到来が予感されている。
 そうしたなかで10年後の30年は一つのターニングポイントになりそうだ。同年は国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成年であり、日本政府が閣議決定した温室効果ガス削減の中期目標(13年度比26%削減)の達成年でもある。世界の人口は85億人と、19年の77億人から10%増加する。また技術革新が引き起こすイノベーションをみても、30年には人工知能(AI)が人間と自然な会話ができるようになるとされ、自動走行車の完全自動運転の実現も予測されている。ヘルスケア領域では、すい臓、腎臓、肝臓などにおける再生医療の実現が期待されている。
 一方、日本では30年に人口の31%が高齢者(65歳以上)となり、15歳から64歳の生産年齢人口は15年の7700万人から6800万人に減少する。年金問題、介護問題が一段と重い課題となるほか、そもそも少子高齢が続いており、国としての活力や経済力をいかに維持・向上させるのかが問われる。そうした幾多の機会やリスクのなかで、いち早く新たな成長セオリーを見つけ出すのは、どの企業なのか。未来を見つけ出す競争が熱を帯びてきた。

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