石油化学コンビナートの定修時期の平準化を目的とするガイドラインを、石油化学工業協会など6団体による「定期修理研究会」が作成した。定修日程調整のためメンテナンス工事業者団体、化学品ユーザー業界団体などで構成される「定修会議」を設置し、2023年度の実施を目指して20年4月から作業に入ることになった。定修時期の平準化は人手不足、工事品質の確保の観点から、石化協、日本メンテナンス工業会が強く求めていた。定修研究会は定修日程調整を実効あるものとするために規制改革を求めている。民間側から投じられたボールを、行政はしっかりと受け止める必要があるだろう。
 石化コンビナートの定修は春と秋に集中し、定修が多いメジャー年と少ないマイナー年を毎年繰り返す。とくに20年度は4年に1度の大定修年に当たり、一時期に大量の作業員動員が必要になることが、製造業一般の人手不足とは性格を異にする。加えて19年度から始まった働き方改革にともなう残業時間の上限規制は、短期集中で取り組まねばならない定修工事を、従来のやり方では実施困難にしている。建設業であるメンテナンス業には5年間の猶予が認められているが、非破壊検査業には、この例外措置の適用はない。
 定修研究会がまとめた報告書には、日本の石化コンビナートの定修とアジアの石化製品市況の相関関係にも触れており、定修時期の分散化はユーザー業界にも利益がある。
 報告書は今後取り組むべき課題として定修にかかわる規制改革を掲げている。具体的には、日程調整に参加する石化会社および誘導品会社の不利益を回避するために一定期間内で保安検査を実施する場合には保安許可日を変更しない運用、および残業時間の上限規制を順守するために電子媒体での図面提出など行政手続きの簡素化や土日祝日にも行政事務を行う臨時開庁制度の導入を求めている。
 定修研究会にはオブザーバーとして経済産業省も参加しており、規制改革を求める意味はよく理解しているはずだ。定修研究会は独占禁止法に抵触しないよう公正取引委員会とも連絡を取りながら報告書、ガイドラインをまとめた。この労に報いるためにも行政の早急の対応を期待したい。
 報告書ではコンビナート地域の課題についても触れた。石化会社、メンテナンス・検査会社は、デジタル技術を活用した各種手続きの簡素化、安全教育の共通化などにより、定修作業の効率化を図らなくてはならないとしている。官民連携した会議体の創設が求められる。

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