定置用蓄電システム(ESS)の成長が見込まれている。温室効果ガス排出削減に向けた世界各国のエネルギー転換政策が背景にあり、再生可能エネルギーの急速な導入拡大が後押ししている。ESSは、出力が不安定な再エネが大量に導入されることによる電力系統への悪影響を防ぐとともに、電力を消費する時間や場所をシフトして有効活用する重要な役割を果たす。日本では、菅義偉首相が2050年にカーボンニュートラル・脱炭素社会の実現を目指す方針を表明。梶山弘志経済産業大臣が再エネ導入拡大に向けた蓄電池の活用に言及したことで、電池業界の期待が高まっている。
 矢野経済研究所の調査によると、世界のESS市場は20年の出荷容量見込み1万6400メガワット時から右肩上がりに成長、26年には12万666メガワット時と7・4倍に拡大する見通し。LiB(リチウムイオン2次電池)のほかNAS(ナトリウム硫黄)電池、レドックスフロー電池などが使われており、将来は全固体電池も期待される。
 国内需要も伸びている。日本電機工業会の自主統計によると定置用LiBの出荷容量は19年度256万8473キロワットと、前年度比1・6倍に増加した。一般住宅向けは、再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が終了した「卒FIT」家庭向けに、蓄電システムを併設し自家消費型に切り替える提案がされている。また近年多発する自然災害やゲリラ豪雨で長時間の停電も発生しており、非常用電源として住宅用に加えて自治体の導入も進んでいる。
 電池は高い安全性を確保することが大前提だが、19年に、それまで市場を牽引してきた韓国でLiBを搭載したESSの火災事故が相次ぎ発生したことは記憶に新しい。またESS用は高容量を重視する電気自動車用と異なり、繰り返しの充放電による耐久性や長期信頼性が求められる。
 ただ現状は、導入する企業や消費者がESSを選ぶ際に得られる情報は初期容量と価格くらいで、ライフサイクルにわたる蓄電量などは明確ではない。ESS用として、当初高容量でも数年で劣化する電池と、容量は少し低いが10年以上使える電池の、どちらを選ぶだろうか。
 電池は使われる環境や使い方により、性能の変化や劣化の進み方が異なる。また国内で取り扱われているESSの電池は日本製だけでなく、韓国製や中国製も使われている。ユーザーが蓄電池の価値を正しく判断できるための基準が必要とされており、これからESS市場が健全に成長していくうえで非常に重要な要素となるだろう。

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