「2020年までに、すべての化学物質を人の健康や環境への悪影響を最小化する方法で生産・利用する」という国際目標(WSSD目標)を受けて、化学物質の適正管理に向けた多彩な活動に取り組む化学業界。化学物質が持つリスクを評価し、化学物質を適切に管理するための情報をサプライチェーン(SC)で共有する活動「GPS/JIPS」も、その一つだ。
 JIPSは、化学物質管理の輪をSCに広げて、社会全体で化学物質のリスク低減を図ろうという活動。国際化学工業協会協議会(ICCA)が策定した「GPS」(グローバルプロダクト戦略)の日本版として、日本化学工業協会が11年に本格的に始めた。日化協会員企業が化学物質のリスク評価を行い、安全性情報やリスク管理方法を分かりやすく文書化してICCAや日化協のポータルサイトなどを通じて一般公開している。
 GPSが目指すのが「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ」(SAICM)への貢献。06年の第1回国際化学物質管理会議(ICCM1)で採択されたSAICMは、02年に国際合意されたWSSD目標達成のための枠組みであり、科学的なリスク評価に基づくリスク削減、有害化学物質に関する情報の収集と提供、各国における化学物質管理の整備などを定める。SAICMを受け、世界の化学物質規制も従来のハザード管理からリスク管理へと大きく舵を切った。
 世界の化学物質管理にパラダイムシフトを起こしたSAICMだが、現在議論されている20年以降の新たな枠組みには「化学物質」だけでなく「廃棄物」も加わる見通し。実際にどのような内容になるかは不明だが、廃プラスチック問題を背景に、廃棄物中の化学物質についても情報を求める動きが活発化しているという。日化協も、今後の動向を踏まえてJIPSの活動の幅を広げたいとしてる。
 化学業界は電機業界などと連携し、化学物質情報を共有するネットワークづくりを進めてきたが、化学物質と廃棄物では法の枠組みが違い、廃棄物処理業者まで情報を伝えるのも簡単ではない。ただライフサイクル全体で管理するのがJIPSの理念とすれば、廃プラでも同様の取り組みを期待したい。
 情報の中身も大切だ。日化協は化学物質安全に関する研究活動「LRI」において、マイクロプラスチックの環境影響評価など廃プラスチックに関する知見の蓄積も進めている。さまざまな情報が飛び交うなか、外部データも含め、科学的知見に基づく情報を伝えていくこともJIPSの役割となるだろう。

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