昨年12月以来、製造・品質問題が相次ぐジェネリック医薬品(後発薬)業界。業界団体の日本ジェネリック製薬協会(JGA)が一連の問題を総括し、対応策をまとめた。製品の供給不安が続いて医療関係者や国民の不安が募るなか、新薬メーカーを含めた製薬業界は今回の検証を重く受け止め、自らの取り組みに生かしていく必要がある。

 発端となったのは福井県に本社を置く小林化工だ。同社が手がける抗真菌剤「イトラコナゾール」に大量の睡眠導入剤が混入し、死者を含め245人が健康被害を受けるという前代未聞の事態を引き起こした。また後発薬専業としてトップ級に位置する日医工も、定められた手順と異なる生産を行うなどし、今年3月に業務停止処分を受けた。そして10月、徳島県の長生堂製薬に対し、同様の理由によって行政処分が下されたことも記憶に新しい。

 小林化工と日医工の問題を中心に検証したJGAの総括によると、経営者の法令順守意識の欠如、不健全な企業文化、企業としての管理体制・内部統制の欠如、組織体制の不備の黙認が問題の主な原因という。さらには医薬品企業経営者が持つべきリスクマネジメント意識、医療の一翼を担っているという意識、「薬は患者様のためにある」という意識がなかったことも大きな要因と指摘した。そのうえで人々の生命に直結する生命関連産業の一員であることを自覚すべきと訴えている。

 総括を踏まえてJGAは、業界として取り組むべきことを「コンプライアンス・ガバナンス・リスクマネジメントの強化」をはじめとする5項目の対応策として提示した。例えば、第三者による監査制度の導入検討、安全管理体制の充実と手順の標準化支援といった内容を盛り込んでおり、具体的な取り組みを掲げたことは評価できる。後は実行あるのみだ。そして、その結果を、どう国民に分かりやすく伝えていくかだ。

 ともすると個社、あるいは後発薬業界独特の問題とみなす風潮もあろうが、同様の問題は新薬メーカーでもしばしば起きている。製薬産業がモノづくりである以上、決して他人事ではない。外注化が進み、生産現場に通じた人材が経営層で薄くなっている分、よりリスクが高まっているといえるかも知れない。JGAの総括を虚心坦懐に読み込むべきだ。

 他方、問題の根絶には、企業単独・業界単独では限界があり、行政の力が必要なことも多い。日本製薬団体連合会(日薬連)、日本製薬工業協会(製薬協)を交え、一連の問題を官民で徹底議論する場を設けることも求めたい。

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