サーキュラーエコノミー(循環型経済)に不可欠な要素の一つとして「価値を損なうことなくモノを再生・再利用し続ける」ということがある。例えば廃プラ再生でマテリアルリサイクル(MR)、ケミカルリサイクル(CR)、サーマルリサイクル(TR)のうち、MRとCRが優先される理由の一つには、TRで得られる熱エネルギーの価値が再生樹脂・再生原料油に比べると低い、つまり再生前の樹脂の経済的価値が毀損されるという考え方がある。しかし経済性を重視するならば温室効果ガス(GHG)排出削減に目配りしつつ、TRも柔軟に組み込むべきだ。

 合成樹脂は、相対的に価値を維持しつつ再生しやすい化学品といえる。PETボトルなどは開発途上国も含め世界的に回収ルートが確立しており、MRも比較的容易。また化学大手は相次いでCRプラント建設に着手しており、循環型経済への移行は着実に進んでいるようだ。

 近年問題となっている海洋プラを巡っては、再生品認証を行う非政府組織ゼロ・プラスチック・オーシャンズの取り組みが興味深い。海岸線から50キロメートル以内を流れる河川や水路、およびそれらの両岸から200メートル以内にある廃プラを、海洋プラとなる可能性が高い「オーシャンバウンド・プラスチック」(OBP)と定義。その回収・削減にインセンティブを付与した。すでにサウジ基礎産業公社などがOBP再生樹脂認証を得ている。

 リサイクルコストは規模や対象物、再生品の汎用性などに依存し一様ではない。しかしながら、一般的に再生前の分別や再生品の物性維持に工夫を要するMR、再生工程で大きな熱エネルギーが求められるCRに必要な社会全体のコストを考慮すると、リサイクル手法としてコスト性に優れるTRを排除するのは早計だ。日本には、GHG排出を抑制できる焼却技術もある。

 TRで得られる熱エネルギーの価値が低いとすれば、CCUS(CO2回収・貯留・利用)を組み合わせようにも、相当の規模が要求されるだろう。ただ現状、木質ペレットを燃焼させて発電する際に排出されるCO2が、議論はありながらも、森林のCO2固定機能を前提に世界的に「カーボン・ニュートラル」とされていることを考慮すると、GHG回収技術との組み合わせ次第で廃プラリサイクルにおけるTR活用の余地は広がるはずだ。

 廃プラリサイクルは、樹脂の種類や状態、再生後の利用しやすさ、環境性とコストなどを総合的に勘案しながら、最適な手法を選択することが重要だ。

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