生理症状など女性のライフステージにおける、さまざまな体の悩みを技術で解決する「フェムテック」。働く女性が、より活躍できる社会に向けて今後、さらに期待される分野だ。2025年には世界の市場規模が5兆円に達するともいわれ、化学や製薬メーカーをはじめ参入企業が相次いでいる。ネットやメディアで見聞きする機会が増えて関心が高まっており、各社の取り組みが注目される。

 そもそもフェムテックとは女性(Female)と技術(Technology)を掛け合わせた造語で、欧米を中心に関連市場は活況を呈している。国内でも注目が高まる背景には、働き方改革の一つの柱である女性の活躍推進が挙げられる。

 ここ数年で女性の働き方が大きく見直されてきた一方、女性特有の体調に触れるのはタブー視されてきた。しかし生理痛や、生理前に心身の不調を感じる月経前症候群(PMS)は、個人の悩みにとどまらない。こうした不調は労働力の低下に直結。経済損失は年間7000億円近くに上るともいわれ、社会に大きく影響しているのも事実だ。

 帝人は、女性をターゲットにした善玉菌サプリメントの新ブランドを立ち上げた。第1弾の製品として膣内の調子を整える乳酸菌などを開発。今後も順次ラインアップを増やしていくという。

 同社の調査により、在宅勤務などリモートワークを活用する女性は、デリケートゾーンの不調を自覚する割合が高いことが判明。東京大学医学部の原田美由紀准教授は「運動量が減り、心身のストレスが溜まることで生じる全身の不調が反映されているのではないか」と推察する。

 PMS関連製品の研究に長年取り組んできた大塚製薬では、周期的に訪れる女性の体調変化に着目したサプリメントを発売した。東京歯科大学市川総合病院産婦人科の小川真里子准教授は「PMSの症状や状況を知ることが一番の予防法であり改善法」と話している。花王傘下のカネボウ化粧品は、女性向け健康情報サービスの「ルナルナ」と連携。フェムテック分野で女性に寄り添う活動を始めた。

 生理症状の改善や不妊治療をきっかけに、女性が抱く体や健康への不安をオープンに話せるようになると、今後は更年期障害など、よりタブー視されがちだった悩みが、ますます顕在化すると考えられる。他方、女性のライフスタイル多様化により、サポートを目的とする製品やサービスを画一的に捉えることが難しくなってきた。社会全体の意識が変わろうとするなか、企業には一層知恵を絞り、新製品創出を競ってほしい。

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