中国事業を展開する日系化学各社が戦略の見直しを迫られている。ここ数年の環境規制強化を受けて、特定製品の生産停止や工場移転などを余儀なくされる企業が相次いだ。さらに米中貿易戦争の長期化でサプライチェーンを見直す企業も多く、難しい舵取りが要求される。
 環境規制強化にともない、江蘇省に拠点を構える産業用洗浄剤や接着剤関連などの工場が現地政府から移転を命じられた。これに沿って操業を停止し、他の拠点への生産移管なども行われている。
 シール・ラベルなどを主力とする三光産業は、生産拠点のある深圳市で油性系インキの使用が禁止されたため、これを用いる製品の製造が困難になった。米中貿易摩擦による中国経済の減速もあって、前3月期における中国セグメントの売上高は前期の約半分まで落ち込み、セグメント損失に陥った。
 同拠点は8月をめどに完全撤退する。同じ深圳地区に年内に販売会社を設立する予定で、他の拠点で生産した製品を供給する。その一方で東南アジアに経営資源を集中。とくにタイに最重点を置き、営業力や生産体制の強化を図る。
 フラットヤーン最大手の萩原工業は、米中貿易摩擦の回避策を進める。中国拠点から米国に輸出していた製品について、生産工程の一部を日本で行い出荷することで追加関税を回避することが狙いだ。コストアップにつながるものの、関税の追加を免れることで十分に効果があるという。一方で同社も東南アジアで事業強化を図る考えで、タイにアフターサービスを行う拠点を設立した。中国頼みからの脱却を目指していく。
 一方で中国政府は経済対策として33兆円規模の減税を決定。企業の負担軽減を図り、設備投資を後押ししている。こうした背景もあり、米国輸出が苦戦するなかで内需産業の投資が旺盛になっている。これを捉えて日系企業も動いている。
 前3月期の大手化学の業績をみても、期後半からの原料高、半導体やスマートフォンの変調とともに、中国の景気減速が大きく影響した。今期も米中貿易摩擦の激化や中国経済の不透明さが残るなか、各社は我慢の年との位置づけが強い。下期からの回復を予想する向きも多いが慎重な見極めが必要となる。
 いずれにしても中国を取り巻く諸環境に端を発したアジア戦略の再構築。巨大市場であるだけに熟慮のうえ決断すべき。しかし企業は収益を確保し続けなければ成長の源泉は手に入らない。短期的対応とともに長期的観点を持ち、この局面を見誤まらず乗り越えたいところだ。

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