強力な台風19号は、気象災害の激甚化をまざまざと見せつけた。勢力を保ったまま上陸した原因の一つに海水温の上昇が指摘されており、地球温暖化の影響は無視できない。世界の専門家の間では、気候変動対策の投資効果が極めて高いことが強調されている。国家だけに任せておく必要はない。民間セクターが、より積極的にこの問題に取り組むことで対策を加速できる時代に入っている。
 気候変動の影響には相乗効果があることが近年明らかになってきた。さまざまな個別の変化を足し算した以上の脅威が地球を襲っており、ほんの数年前の予測と比べ気候変動の影響が早く、かつ大規模に生じている証拠が見つかっているという。
 気候変動政府間パネル(IPCC)の「1・5度C特別報告書」の統括執筆責任者であるクィーンズランド大学のオヴェ・ホウ・グルベルグ教授を中心とした研究グループは先月、国連総会に合わせて「サイエンス」誌に「世界平均気温を1・5度Cにとどめるために人類が今やるべきこと」と題する論文を公表した。温暖化を1・5度C以内に収めるには、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする必要がある。達成には50年までの35年間にエネルギー部門へ約2兆~4・4兆ドル投資をしなければならないが、それによる経済的便益は4~5倍にもなるという。
 前国連事務総長の潘基文氏を議長に18年に設立された世界適応委員会も、気候変動への適応が極めて有利な投資とする報告書を公表している。「早期警報システムの強化」「強靭な新規インフラ」「乾燥地帯での農業生産改善」「マングローブの保護」「水源管理の強靭化」の5分野を評価したもので、20年から10年間に1・8兆ドルを投資した場合、純便益は7・1兆ドルになると試算している。損失を回避するばかりでなく、生産性の向上やイノベーション、景観の保護も同時に促進できる。
 国立環境所などの研究グループは、5種類の異なる気候モデルを使って今世紀末までの気候変動にともなう被害額を推計した。温室効果ガスの排出の将来見通しと、人口やGDPなど社会経済の将来状況にも変化を加えた複数のケースを見積もり、それぞれの被害額の違いが気候モデルの違いによるのか、その他の人為的な要因によるのかを分析した。その結果、39年までは気候モデルの違いが主な要因だが、21世紀の中盤で逆転し、80年以降は違いの78%が人為的要因によってもたらされると分かった。短期的視点にとらわれると、その先に確実な便益を得られないことを教えている。

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