平成時代が終わろうとしている。その平成と重なる20世紀末から21世紀初頭にかけて、世界は大きく変化した。その背景の一つに、科学技術の急速な進歩がある。AI(人工知能)やビッグデータ解析、再生医療、自動運転など、実用化が遠い先と思われていた先端技術は秒読み段階にある。間もなく始まる令和時代において、世界はさらに想像以上の変化をみせるかも知れない。
 平成日本は、バブル経済の崩壊と、その後のデフレ経済、相次ぐ大型地震などによる甚大な自然被害、いよいよ始まった高齢化社会など、さまざまな苦難に直面した。そして課題も浮き彫りとなった。例えば製造業の世界では、世界をリードしていたエレクトロニクス業界が大きくシュリンクするなど、存在感を失った分野も少なくない。また先端技術においても、ビッグデータを活用した新たなビジネスモデルへの対応に出遅れるなど、技術立国日本の地位も脅かされつつある。
 日本の化学企業にとっても、この30年間は試練だったといえる。作れば売れる大量消費時代が終焉し、近隣国の新興化学企業との競合が激化するなかでバルクケミカルの収益が大きく落ち込んだ。事業の中心を機能商品、スペシャリティ製品にシフトすべく自前の研究開発に力を入れてきたが、そうした新領域が収益に貢献するには長い時間がかかった。
 しかし振り返れば日本の化学企業は着実に成長した。個々の企業をみれば、世界における存在感を増してきたといえる。単に足元の業績が好調というばかりでなく、各企業が確固とした得意技術、得意領域を確立しており、来るべき新たな時代に向かい、さらに飛躍するポテンシャルを感じさせる。
 日本企業は、社会に貢献できると確信した技術・製品については、たとえ収益面で厳しい時期が続いても経営資源を投入し磨きをかけてきた。株主の声が強く、短期の収益向上が求められる欧米企業は、有望な技術・製品であったとしても、場合によって切り捨てざるを得ない。これと対極的な日本メーカーの生き方は、ここにきて大きな強みとなっている。
 世界ではいま、SDGsやESG投資がキーワードとしてクローズアップされ、社会課題への貢献が強く求められている。エネルギー、食糧、医療、モビリティーなどの領域において、日本の化学企業が育ててきた先端技術の多くは、そうした社会課題を解決するキーテクノジーといえる。新たな時代に一段と大きな花を咲かせると信じ、磨きをかけ続けて欲しい。

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