新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、タイで自動車解体重機を用いた使用済み自動車(ELV)リサイクルシステムの実証運転を開始した。重機などによる解体工程の効率化やシステム化によって20台/日の解体処理体制実現を目指す。アジア新興国では、増加が予想されるELVの適正処理およびリサイクルシステムの構築が課題となっている。自動車産業で先行する日本は自動車の生産・販売のみならず、処理・リサイクルといった産業の静脈分野においても、その技術・知見で貢献していくべきだ。
 タイの2018年の自動車生産台数は前年比9%増の217万台となり、13年以来5年ぶりに200万台を超えた(タイ自動車産業連盟)。国内向け生産が19%増の103万台、輸出向けは2%増の114万台となった。タイ工業連盟(FTI)自動車部会は19年の通期生産見通しを年初の215万台から200万台に下方修正したが、それでも国内販売・輸出とも100万台を予想。また保有台数は16年末時点で乗用車とトラック・バス合計で1560万台に達する。
 今回の実証試験はタイ国内で見込まれるELV増加に対応するもの。現状、解体時に発生するフロンや廃液などを適切に処理するための、ELVに特化した処理・許可に関する法制度は未整備。解体も人手を中心として労働集約的なものだ。そのため資源回収が十分でなく、ELVが増えれば処理能力不足に陥ると予測されている。
 実証試験では、委託先の豊田通商とともにグリーンメタルズタイランド社のピントン工場に自動車解体重機などを導入し、環境に配慮した適正なリサイクルを行う。フロンや廃油・廃液の回収を解体作業のなかに組み込み、トレーサビリティ(回収物の処理履歴追跡)機能を持つ環境配慮型解体プロセスも導入する。環境負荷を抑えつつ効率的に有用金属などを回収するシステムを実証し、廃棄物処理適正化への貢献を目指す。また実証試験と並行して、タイに適した適正処理に関わる制度設計の検討にも協力する。日本の自動車リサイクル法を参考にしながら、経済産業省とも連携しつつ推進していく計画だ。
 現地で処理できない基板や触媒などの有用資源については日本で再資源化する計画で、将来的にはアジア諸国におけるリサイクルモデルの確立を視野に入れている。今後、これら新興国でも次世代環境車へのシフトが予想されている。世界的に原料確保が課題となりつつあるLiBをはじめ、資源確保の観点からも積極的に関与していくべきであろう。

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