日本の研究機関や大学と共同研究プロジェクトを進める欧州の化学企業が増えている。将来を支える技術や素材の創出を目指しているが、エボニック インダストリーズが、包括的な戦略提携を結んだ東京大学と「日本の化学産業の未来」をテーマにしたシンポジウムを東京で開催することを決めるなど、新たな取り組みも始まっている。
 ソルベイと産業技術総合研究所の共同研究契約は最新の事例だ。今年1月23日に契約を結んだ。CO2排出削減や持続可能な開発目標(SGDs)への貢献など、長期的で国際協調が求められるテーマを継続して探索する。産総研が海外企業と、こうしたプロジェクトに取り組むのは珍しい。ソルベイにとってもトップクラスの研究者を擁する産総研と組む意義は大きい。
 一方、シンポジウムを開くエボニックと東大は、2014年4月に「ストラテジックパートナーシップ」を締結している。産総研と同様、東大にとっても海外グローバル企業との包括的な提携は珍しい。これまで奨学金の提供やインターンシップ制度の創設、合同コロキウムの開催などを続けてきた。今後は提携をさらに前に進め、共同研究を本格化して具体的な成果に結びつける。
 アルケマも、14年10月に山形大学と学術交流協定を締結した。アルケマのポリフッ化ビニリデン(PVDF)系ポリマー重合技術と、山形大の有機エレクトロニクス研究センターが持つプリンティング技術などを融合してフレキシブル有機デバイスを作製する取り組みが進展。このほど協定を更新、一段と関係を深めていく。
 欧州化学企業が日本の研究機関や大学に注目していることは間違いない。一方で日本サイドの体制は万全だろうか。それを懸念する事例もあり、不安を覚えざるを得ない。
 国内のノーベル賞受賞者らが高等教育や高度な研究が衰退を始めたとの懸念を背景に、約50人の呼びかけで「大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム」が設立された。来月31日にはシンポジウムを開き、直面する危機と課題を議論する。
 タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「2019年世界大学ランキング・トップ1000」には、日本の103の大学が入り、米国に次いで2位になった。しかしトップ200には2校が入っただけで、中国や韓国の後塵を拝した。
 現在の日本の研究体制をみると、見直すべきは見直し、必要な立て直しを図る時が来ているのではないか。このままでは日本を軽視する「ジャパンパッシング」が強まりかねない。

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