NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、高砂熱学工業、石原産業など8者が、100度C以下の低温廃熱を利用した蓄熱システムの本格実証試験を開始した。産業部門のエネルギー消費原単位の改善は近年足踏み状態にあり、主要なエネルギーである熱の効率的な利用に革新が求められている。脱炭素化社会の実現に向けて、未利用熱エネルギーの活用が促進されることに期待したい。
 NEDOが熱利用量の多い15業種を対象に行った調査によれば、利用されずに放出された熱のうち200度C未満の比較的低い温度帯が76%を占めることが分かっている。この温度帯を有効に活用する技術が導入されれば、国内の産業分野のエネルギー消費量削減に大きく貢献できる。
 ただ200度C以下の低温廃熱は、小規模で多数の熱源に分散していたり、周囲との温度差が小さかったりするため、十分に回収が行えていない。需要のある場所と時間的・空間的に離れていると、効率的な回収・利活用が技術的・経済的に困難で捨てられることが多い。
 今回の実証試験では体積当たり従来比2倍以上蓄熱できる材料を用いる。自動車工場のコージェネレーションシステムで発生した廃熱を蓄え、工場内の産業空調設備と近隣の温水プールで熱源に利用する「オフライン熱輸送型」と、酸化チタンを乾燥させる工程に、その上流工程の廃熱を使う「定置型」の2通りで実施する。期間は来年2月まで。廃熱を除湿・暖房・乾燥工程などへ適用する熱利用システムの技術を確立し、市場展開を目指す。
 政府の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」は、2050年に温室効果ガス排出量80%削減することと、今世紀後半のできるだけ早期に「脱炭素社会」を実現することを目標に掲げている。廃熱利用への期待は高く、産業部門については「技術革新による電化・水素化を進めるとともに、その難度が高い分野を中心に、未利用熱の徹底的な活用を含めたエネルギー効率の向上を進める」と、未利用熱の有効活用を重要テーマの一つに挙げた。
 回収した熱は熱として利用するばかりではない。今年、NEDOでは「省エネルギー技術戦略」を改定し、廃熱を効率的に電力に転換する技術を「重要技術」に追加した。熱を電気に変換できれば、さまざまな用途を通じてCO2削減につなげることができる。脱炭素社会の実現には水素や再生可能エネルギーだけでなく、廃熱利用の促進も含めた、あらゆる選択肢を追求する必要がある。

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