世界最大級のソーラーカー大会「ワールドソーラーチャレンジ」が10月にオーストラリアで開催される。2年に1度開かれており、今回も技術力をアピールしようと24カ国から53チームが集まる予定だ。参戦各大学の車両にはサポート企業が付き、最先端の太陽電池(PV)や軽量化素材の提供を受ける。まさに”ソーラーカーのF1”といえる完成度のマシンが並ぶ。
 ただレースでは熱い戦いが繰り広げられるものの、実用化となるとどうだろうか。次世代自動車と聞いて、ソーラーカーを「いの一番」に挙げる人はほとんどいない。自動運転を筆頭に水陸両用や空飛ぶクルマなどを想い描く人はいようが、自動車関連ビジネスに携わる人々に聞いても、PVの活用は「あり得るかもしれない」といった程度の返答が大半を占める。
 なぜソーラーカーが未来のクルマに結びつかないのか。まずは、そのイメージ。PVの実用化は60年以上前。ようやく屋根に設置した太陽光パネルを見かける機会も増える一方、日常に溶け込んだ製品に未来を連想させるのは、なかなか難しい。
 そして最大のネックが技術面にあることは疑いようがない。まずは発電能力。6インチのPVセルは現在、実用品で変換効率が約20%ほどだ。トヨタ自動車は「プリウスPHV」のルーフなどにPVセルを敷き詰めたソーラー充電システム装着車を販売しているが、PVのみの走行距離は6キロメートルほどに止まる。
 次はコスト。仮に、このPVセルをシリコンの汎用品からガリウム・ヒ素を用いた宇宙用PVセルに置き換えば、着実に航続距離を伸ばせる。しかし今度はコストが跳ね上がる。その額は現状で「一ケタ違う」(PVメーカー)という。
 ただ新たな試みも始まろうとしている。シャープ、トヨタ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の3者は、EVの航続距離や燃費向上効果の検証を目的に、高効率PVを実装した車両の公道走行実証を開始する。従来のソーラー充電システム装着車では、駆動用バッテリーへの充電は駐車中のみだったが、実証車両では走行中も行えるシステムを採用した。また定格発電電力は従来車と比べ約4・8倍になるという。太陽光のみの駆動時間が増えることから、CO2排出量の削減に注目が集まっている。
 自動車業界は今「百年に一度の変換期」と言われている。未来のクルマ実現に向け、あらゆる可能性が模索されるなか、PVを活用しない手はない。ソーラーカーを通じて技術開発に努めるなど、素材メーカーの積極的な関わりも期待したい。

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