産学官の有識者で構成する水素・燃料電池戦略協議会が新たな「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定した。2017年策定の「水素基本戦略」および昨年7月に策定された第5次エネルギー基本計画の目標実現に向けて、16年に改訂したロードマップを見直し、基盤技術のスペックやコスト内訳の目標などを新たに設定している。燃料電池車(FCV)では、25年ごろにハイブリッド車(HV)との価格差を従来の300万円から70万円へ、燃料電池システムのコストを1キロワット当たり約2万円から同0・5万円へ、それぞれ低減することなどが盛り込まれた。低コスト化では使用原材料にも言及。今後の技術開発に大きな影響を与えそうだ。
 新ロードマップはサプライチェーン、利活用、技術開発の推進・国民理解の各論を軸に方向性をまとめている。このうち水素利用モビリティ分野では、燃料電池自動車の量産化・低価格化・航続距離伸長などに必要な要素技術のスペックやコスト削減の内訳を明示。スペック目標は30年ごろに航続距離800キロメートル、貴金属使用量1キロワット当たり0・1グラムなどを設定。コストもFCスタックで現状の同約2万円を同0・4万円へ、水素貯蔵システム(貯蔵量5キログラム相当)は約70万円を10万~20万円へ、削減することを謳った。
 また、そのためのアクションプランとしては、燃料電池システムではクロスリークを防ぎつつ電解質膜のさらなる薄膜化と耐久性の維持・向上を挙げた。触媒では性能や耐久性を維持・向上させつつ、貴金属使用量の低減させるほか、コアシェル触媒やナノワイヤー・ナノシートといった新構造触媒などへの代替を図る。また水素貯蔵システムについては、車載水素タンクの大きなコストを占める炭素繊維の使用量低減や新たな材料開発などの重要性を謳っている。ロードマップの方向性が今後の製品開発に、どのような影響を与えるのか注目される。
 使用原材料に関してはFCV以外でも言及した。水素ステーションでは運営費の削減手段としてシール材・ホースの耐用充填回数を現在の約2200回から20年に1万5000回へ、22年には3万回に引き上げることで年間100万円~200万円のコスト削減を図る。また建設費削減のために、使用する鋼材を20年の東京オリンピック・パラリンピックまでに安価な汎用材料に代替可能とする。
 水素社会に向けた取り組みは大きなビジネスチャンスだが、実現には経済性確保が不可欠。この動きを取り込めるか否か。材料メーカーをはじめサプライヤーの力量が問われる。

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