先ごろ「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス」(グリーン投資ガイダンス)が公開された。気候関連情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づいて企業が開示した情報を、投資家が読み解く際の視点について解説している。金融機関などに向けてTCFDコンソーシアムが作成したものだが、気候変動対策を積極的に推進する企業の後押しとなることを意図したという。
 気候変動問題への取り組みは企業の社会的責任という視点で語られることが多かったが、近年は企業経営に直接的・間接的に及ぼす影響が注目されるようになっている。例えば「異常気象によるサプライチェーンの寸断」「省エネ技術による新市場獲得」などが挙げられる。投資家が投融資を判断する際の基準も変わり、気候変動対策が企業活動に与える影響について情報開示を求めるようになった。
 2017年6月に公表された「TCFD提言」は、気候関連情報を開示するためのフレームワーク。業績に影響を与えるようなリスクおよび機会を整理し「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標・目標」の4つの切り口から開示することを推奨している。現在までに世界864(10月10日現在)の機関が賛同しており、うち日本は199(同)と世界で最も多い。
 TCFD提言が強調するのが「建設的な対話」(エンゲージメント)と「事業機会」(オポチュニティ)。石炭を筆頭に化石エネルギーを扱う企業からの投資撤退(ダイベストメント)の動きも目立つが、ネットゼロ社会の実現にはポジティブな資金の流れが不可欠。対話により低炭素化に向けた投資を促すとともに事業機会の拡大を投資リターンにつなげ、イノベーションに持続的に資金提供していく仕組みが必要だという。
 「エネルギー多消費型産業」と色眼鏡で見られ勝ちな化学産業にとって、TCFD提言は低炭素社会に向けた取り組みを正しく評価してもらう機会といえる。ライフサイクルアセスメントやスコープ3の評価などの経験は、提言のなかでも難しいとされるシナリオ分析にも役立つだろう。今後は廃プラスチック問題をはじめ気候変動以外の情報も強く求められてくる。
 情報をどう開示すべきか戸惑う声も聞こえるが、グリーン投資ガイダンスを読むと、自身がどう変わり、社会をどう変えたいか姿勢を示すことが大事だと分かる。TCFD提言は完成形ではない。できるところから始め、段階的に量と質を高めていけばよい。逆に、姿勢を示せない企業は投資の対象から外されてしまうだろう。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る