水素エネルギー社会の実現に向けた取り組みが世界的に広がっている。国際エネルギー機関(IEA)は、G20会合の開催に合わせて「水素レポート」を発表した。クリーンエネルギーとしての水素を高く評価し、克服すべき課題、政策提言を盛り込んでいる。また経済産業省、欧州委員会(EC)、米エネルギー省(DOE)は「水素・燃料電池技術に関する共同宣言」を発表。3機関が協力して標準化や研究開発を進めるとした。日本は水素キャリアなど実証事業を推進し、技術で世界をリードするポジションにいるが、規格など国際的ルール作りでも主要な役割を果たしてほしい。
 IEAの水素レポートは、水素は多様なエネルギー課題の解決策となり、発電燃料・化学原料・輸送燃料の多用途に使えると将来像を描いている。そして高い製造コスト、インフラ開発の遅れ、産業の発展を阻害する規制の存在といった課題を克服すべきとした。
 提言は①野心的かつ具体的な長期水素戦略の策定②クリーン水素の需要喚起③投資リスク低減の仕組みの導入④研究開発支援⑤不必要な規制の撤廃⑥進捗のレビューの実施⑦産業、ガスインフラ、トラック・バスで水素利用を拡大するとともに水素の国際貿易に向けた輸送ルートの確立に集中的に取り組むこと-を盛り込んだ。
 日本は水素の製造、貯蔵・輸送、利用のサプライチェーン全般の開発に取り組んでいる。そのすべてが世界のトップとは言えないまでも、水素燃料電池自動車の普及や、液化水素、有機ハイドライド、アンモニアなど水素キャリアおよび、そのインフラ開発では先行しているといっていい。日本だけが突出するのではなく、各国の動きと協調を保つことが水素エネルギー普及の近道となるだろう。
 ただ懸念されるのは技術で先行しても政治で負けることだ。今後、本格化するであろう国際的な規格化、ルール作りが日本に不利なものとなることは絶対に避けなくてはならない。水素協議会には日米欧の100以上の企業が参加しているが、欧州の発言力が強いとされる。液化水素運搬船の規格では日本の主張が入れられた実績もあり、今後の標準化作業でも積極的な役割を果たすべきだ。
 経産省、EC、DOEによる共同宣言は、日米欧の水素エネルギー分野の政策当局が、今後も緊密な協力関係を維持することを表明したものだ。9月に開催される第2回水素閣僚会議に向けた協力覚書(MoC)作成も見据えており、水素分野における協力枠組みを効果的なものとなるよう期待したい。

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