昨年11月30日に、一般海域における洋上風力発電開発のルールを定めた洋上風力新法が成立し、同事業分野への参入機運が盛り上がっている。一方で日立製作所が風車生産から撤退し、今後は独ネエルコン社からの調達および風力発電システムの運転・保守(O&M)を中心とするソリューション事業に注力すると先月発表した。洋上風力発電は日本でも今後、大きな市場を形成すると期待されるが、心臓部といえる風車は海外製品しか選択肢がなくなる。洋上風力はサプライチェーンが長いため風車製作以外でも日本企業の参入機会は多い。どの分野で競争力を発揮できるか。見極めを急ぐ必要がある。
 第5次エネルギー基本計画で再生可能エネルギーは主力電源と位置付けられた。なかでも洋上風力発電は潜在成長性が高いとされる。太陽光発電などに比べて部品点数が多く、工事も難易度が高いため、多数企業の参入が期待される。日本風力発電協会(JWPA)は、2030年までに10ギガワット程度の導入目標を設定すべきと政府に提言。その経済効果は直接投資だけで5兆~6兆円と試算している。
 風車は規模が大きい方が発電量当たりの投資金額を小さくできる。欧州では風車一基当たり9~10メガワットが主流になりつつあるが、日立の風車は5・2メガワットと大きく後れを取っていた。
 今後、大型化に向けて開発投資を投じるよりも、IoTプラットフォーム「ルマーダ」を活用したソリューションで洋上風力発電事業を展開する方が競争力を発揮できると日立は考えたのだろう。しかし三菱重工業、日本製鋼所に続き日立も撤退したことで、合計10ギガワット、1000基を必要とする風車市場を、MHIヴェスタス、シーメンスなど海外企業にすべて委ねることになる。
 国内産業育成という観点からは、いささか残念な日立の決断だが、しかし、それでも日本企業に大きなチャンスは残されている。欧州市場で経験を積んだ電気事業者、商社などが日本市場の本格立ち上がりに向けて準備を進めている。ゼネコン、マリコンにも作業船建造の動きがある。LNGプラント建設で世界市場を二分する日揮、千代田化工建設も本格参入をうかがっている。風力発電プラントでも定額契約、一括請負という事業モデルを定着させることができれば、欧州とは違った市場を形成できるだろう。
 市場黎明期にあって参入、提携、事業モデル見直しなどは今後も予想される。政府にも課題は残されており、再生可能エネルギーの接続を保証する系統電力網の増強などが求められる。

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