経済産業省がこのほど「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」をまとめた。プラスチックの回収・代替双方に限界がある以上、海洋生分解性プラスチックの開発に期待が高まるのは自然なこと。海洋生分解性プラスチックに対する懐疑論を拭い去り、海洋ごみ対策の有効な選択肢として開発が進むことを期待したい。
 海洋ごみ対策の基本は、海洋へのごみの流出をなくすることにある。陸上で排出され、河川を通じて海へ流れ出たものもあれば、海で使用することを前提としたものもある。海洋ごみとなっているプラスチック製品には飲料用ボトルや漁網、ブイなどが多い。まず100%回収へ向けた不断の努力を求めたい。ただ地球上の70億を超える人々が排出するプラスチックごみを「完全に回収し切れる」と考えるのは現実的ではない。
 回収の徹底が難しいならば、プラスチックの使用を全面的に禁止してしまうのも手だ。しかし現状プラ製品が担っている機能を、すべて他の素材で代替するのは容易ではない。例えば食品の保存にプラスチック製の容器・包装が広く使われている。これがなくなれば食品ロス対策は大きく後退する。
 海洋生分解性プラスチックには懐疑論がある。一つは、この広大で多様な海で、本当に分解するのかという懸念。もう一つは、海に流れていっても安心と思えば「ポイ捨て」が増えるのではという懸念だ。2015年に国連環境計画が公表した生分解性プラスチックと海洋ごみ問題に関する報告書でも、これらの理由で対策としての有効性を認めていなかった。
 今回まとまったロードマップは、こうした海洋生分解性プラスチックの現状を踏まえ、生分解性や安全性について信頼性を確保するための国際基準の策定から始まる、地に足のついたものだ。海洋生分解性プラスチックの導入は、あくまで万が一、海洋へ流出してしまった場合の対策と位置付けられており、生分解するとはいえ回収が大前提だ。一般のプラスチックと分別するための識別表示制度の構築も盛り込んでいる。将来的には漁具や肥料の被覆材への応用を念頭に、海洋生分解のスピードやタイミングをコントロールするスイッチ機能などにより、製品の使用中は安定し、不要になった時点で速やかに分解するような新素材の開発までを展望している。
 確かに、よく分からないものを不用意に使うのは危険だ。しかし、だからといって将来性を無視して全否定してしまってはイノベーションの芽を摘むことになる。留意したい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る