独メルクが日本で再び設備投資に乗り出す。半導体向けのパターニング材料・絶縁材料をはじめとするセミコンダクターソリューションズ事業の研究開発体制を強化するため、静岡事業所(静岡県掛川市)に新棟を建設することを決めた。静岡事業所は同事業の研究開発と生産の中核拠点。今回の投資でそのポジションを一段と高める。
 同社は昨年、ディスプレイソリューションズ、セミコンダクターソリューションズ、サーフェスソリューションズにより構成するパフォーマンスマテリアルズ・ビジネスの新戦略を決めた。セミコンダクターソリューションズを成長事業に位置づける一方、ディスプレイソリューションズは収益基盤の改善・強化を目指すのが骨子。静岡事業所における投資計画は新戦略具現化のための施策でもある。
 一方で今年3月にはディスプレイソリューションズ事業の研究開発と生産体制を見直す方針を固めた。液晶材料の研究開発などの機能を厚木事業所(神奈川県愛甲郡)から静岡事業所に移すほか、厚木事業所の生産機能を台湾と韓国に移管する。
 厚木事業所は液晶材料の研究開発と生産のネットワークを韓国、台湾、中国に広げる際のモデルとなった事業拠点である。1975年に配送センターとしてスタートし、79年には液晶材料のアプリケーションラボを設け、81年から液晶材料を生産してきた。メルクグループの液晶材料事業の成長とともに、高収益体質を支えた事業所であることから、再編は重い決断であったに違いない。
 メルクの日本における投資は静岡事業所にとどまらない。操業から35年を経たパール顔料やエフェクト顔料の開発・生産拠点の小名浜工場(福島県いわき市)でも投資を続けてきた。同工場は日本で開発した高純度のフレーク状アルミナを基材にした光輝性顔料「シラリック」とアルミフレークベースの高光輝性金属エフェクト顔料「メオキサル」を生産することで知られる。シラリックについては数次にわたって生産体制を強化する投資をしてきた。
 不幸にも2011年の東日本大震災の影響を受けたが、2カ月後には生産活動を再開した。当時、日本法人の社長を務めていたカール・レーザー氏は本紙に対し「(震災があっても)戦略に変更はない」と強調、小名浜工場における投資を続けた。実際、メオキサルの生産を始めたのが13年である。
 残念ながら欧米の化学企業の日本での設備投資は、それほど多くない。メルクには日本における投資活動の成功例を示し続けて欲しい。

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